第32章 *抹消パスト*
『ありがと、ツノ太郎』
ツノ太郎『ふ..あまり夜に出歩かないことをすすめるぞ。お前の匂いは様々なものを引き寄せるからな』
最後に"おやすみ"とツノ太郎は微笑むと、光を纏ってその場から姿を消した
するとその後からザッザッザッと足音が聞こえ、二人の青年が少し遠くの方で話している声が聞こえた
?『..どうだ、いたか?』
?『いや、こちらにはいらしてないようだ』
?『西校舎の方かもしれないな』
?『ああ、若様..なぜ、誰も連れずに外出など!貴様が目を離すからだぞ、シルバー!』
緑髪の青年が頭を抱えながら心配そうに項垂れながら、シルバーと呼ばれた銀髪の青年に食ってかかる
シルバー『赤子じゃないんだ。大袈裟に心配しすぎたと思うが..』
?『何かがあってからでは遅い。一秒たりとも気を抜くな!貴様、若様の護衛という大役を仰せつかっている自覚があるのか!?人間でありながら、若様やリリア様に育ててもらったご恩を忘れたとは言わせんぞ!』
シルバー『はぁ..それとこれとは関係ないだろう..』
そう言って二人はまた"若様"と呼ばれる人物を探して走り去っていった
『何だったんだろうね』
ユウ『若様って言ってたね。迷子でも探してる?』
『分かんないけど..ふぁ~あ..』
ユウ『疲れちゃったね。もう寝ようか』
運んであげる、とユウは眠そうに欠伸をしたレイラを軽く抱き上げると、寮へと戻っていった
『ユウ..また今度にお話していい?』
ユウ『今日見た記憶のこと?うん、焦らないで。いつでもいいから..なんだったら言わなくたっていいんだよ?』
『でも、ちゃんとみんなに知っててほしい、から..』
ユウ『そっか。じゃあ待ってるね..さ、もうおやすみ』
ベッドの中で優しく抱き締めると、久しぶりの自分の部屋のベッドということと、ユウの腕の中という一番安心する場所で眠れるということもあって、レイラはすぐに微睡みの中へと落ちていった
ユウ『..おやすみ、僕の可愛いレイラ』
その日、ユウは夜中に部屋の鏡が光り、その向こうから誰かが話しかけてくるという不思議な現象を目の当たりした
ユウ『鏡から、声..何なんだったんだろう』