第32章 *抹消パスト*
オンボロ寮
レオナたちに別れを告げ荷物まとめてオンボロ寮に帰ると、ゴースト達に厚い歓迎をされ(中には泣いているものもいた)、改めてオンボロ寮を取り戻せたことに三人は心から喜んだ
グリムは今回の疲れもあってすぐに寝落ちし、ユウとレイラは二人で手を繋ぎながら寮の外の庭を歩いていた
『帰ってきたね』
ユウ『見た目ボロいけど、やっぱり落ち着くよ』
ツノ太郎『おや、戻ったのか』
フワリと昨日と同じ黄緑の光が浮かび上がり、そこにツノ太郎が姿を表した
『ツノ太郎』
ツノ太郎『まさかアーシェングロットとの勝負に勝利するとは。ぼんやりしていそうに見えて、お前達も中々に曲者らしい』
ユウ『ツノ太郎のガーゴイルの話がレイラの予想を確信にしたんだよ』
『ん。ツノ太郎のアドバイスのおかげ』
ツノ太郎『僕の?...別に助言したつもりはなかったんだがな。ふふ..何にせよ、この庭が騒がしくならずに済んで良かった。すまし顔のアーシェングロットが悔しがる顔は、さぞ見ものだっただろう』
僕も見てみたかった、と悪い笑みを浮かべるツノ太郎にユウ達は苦笑いを浮かべるしかなかった
ツノ太郎『..ん、僕はそろそろ自分の寮に戻った方が良さそうだ』
『もう行っちゃうの?』
ツノ太郎『そう悲しそうな...ん?レイラ、お前の中の闇の気配が些か強く感じる。何かあったのか?そういえば心なしか顔色も優れないな』
今回の疲労によって少し青白くなった頬に手を滑らせながらツノ太郎は形の良い眉をひそめる
『ん...ちょっと..ね』
ユウ『レイラ..』
ツノ太郎『レイラ、手を』
頬に添えていた手を差し出すと、レイラは素直にその手をとる。すると軽く引き寄せられ、もう片方の腕で抱き締められた
『ツノ太郎?』
ツノ太郎『そのまま動くな。今回健闘したお前に、僕から贈り物をやろう』
サラッと髪を撫でると、レイラの頭上からキラキラと黄緑の光が静かに降り注ぎ、吸い込まれるように消えていった
ユウ『綺麗な魔法だ..何をしたの?』
ツノ太郎『ちょっとしたまじないだ。これで少しは楽になるだろう』
そう言ってレイラから離れたツノ太郎は二人に背を向けて歩きだす