第32章 *抹消パスト*
信じられない..と俯くアズールにラギーはほんの少し同情した
ラギー『ま、コツコツ集めてきたもん台無しにされたらそりゃ怒るっすよね。オレだって、ずっと貯めてる貯金箱を他人に割られたら絶対許せないと思うし』
グリム『でも、やっぱ悪徳商法はダメなんだゾ。反省しろ』
ジャック『その前にお前らは他人が作った対策ノートで楽しようとしたことを反省しろ!』
『でもね、アズさん』
アズール『レイラさん..その傷は..僕が?』
自身の手を握るレイラの制服や体に焦げた痕や傷がついていることに気づいたアズールは声を震わせて見上げる
『凄く痛かったんだから...後でムニムニの刑ね。でもそれよりアズさんの対策ノート..凄いね。グリム80点取れたんだよ..』
アズール『え?』
エース『確かに。だってあんたの作ったテスト対策ノート見て一夜漬けしただけで、90点以上取れちゃったもん』
デュース『ああ。まさに虎の巻、だったな』
ジャック『100年分のテスト出題傾向をてめぇの力で分析して作ったもんだと、学園長から聞いた。あんたの汚いやり口は認められねぇが..その根性だけは認めてやる』
『あのノートは誰にも作れないよ..アズさんの努力の塊だね』
フワリと微笑まれ、アズールの顔に僅かに熱が点り始める。そして周りからの思いがけない称賛にじわりと涙を滲ませた
アズール『...ふん...//そんな慰め、嬉しくもなんともありませんよ』
フロイド『あれ~?アズール、ちょっと涙目になってね?それに顔も赤いよ』
ジェイド『おやおや、泣き虫な墨吐き坊やに戻ってしまったんですかね。顔の赤さは..ふふ』
アズール『二人とも!その件については秘密保持契約を結んだはずですよ!』
慌てたように怒るアズールに、申し訳ありませんと悪びれもなく謝る。そんなジェイドの後ろから、ジャックが写真を片手に近づいてきた
ジャック『そうだ、これ。あんたが取ってこいって言ってた。リエーレ王子の写真、ちゃんと持ってきたぜ。まだ太陽は沈んでない、これで完璧に俺達の勝ちだ』
ジャックの突きつけた写真を全員が興味津々に覗きこむ
『でもレオさんが契約書、砂にしちゃったんでしょ?』