第22章 *閑話カームデイ1 ~リドル~*
ほの暗い話題だったからか、口にした甘いはずのタルトやミルクティーは少し苦く感じる
だけれどその苦味もすぐに甘美へと変えられていく
話題はボク自身や彼女自身の話へと切り替わった。話を聞けば聞くほど...何というか、面白おかしいほどに彼女は無知だった。良い意味でも悪い意味でも
だからなのかボクの知っている事を話すと、興味津々といった様子で前のめりに聞いていた
耳を揺らして楽しそうなその様子の可愛い事と言ったら...
『リドルさん物知り...』
リドル『キミが知らなすぎるだけだよ』
『ぁぅ...意地悪』
リドル『ふふ..すまない。これからゆっくりと知っていけば良いだけだよ』
彼女を前にしていると、最近忘れていた"笑顔"が自然とこぼれる。ボクってこんなにも笑えるやつだったんだ
『ん...だからいっぱい知るためにリドルさんも私に色んな事教えて?』
リドル『構わないよ。分からないことがあればいつだって相談すると良い』
『ありがと』
また花が咲くようなあの笑みは見るたびに心をどうしようもなくざわめかせる
...しかしよくよく見ると、愛らしい顔立ちをしている
緩やかな風に綺麗な黒髪を小さく遊ばせ、細められた深紅の瞳はこの世の穢れも知らない純粋な光が輝いている
まだあどけなく幼い顔はボクの目の前で...目の前で?
リドル『っ...!ち、近い』
『ごめん...でも、リドルさん髪に葉っぱ』
いつも間にかすぐそこまで近づけられた顔に驚いて、ひっくり返りそうになった
彼女はボクに手を伸ばすと、髪に触れてさっきの風で髪についた葉を取ってくれた
リドル『すまない、ありがとう』
『リドルさん、ぼおっとしてた...大丈夫?』
リドル『あ、ああ。大丈夫だ、何でもないよ』
キミをじっくりと見ていた、なんて言えるわけがない
ん?
リドル『ふ...キミも人の事は言えないね』
小さな葉が彼女の髪にも付いている
席を立ち上がると、さっき彼女がボクにしてくれたようにそっと髪に触れる
サラサラしていて、それでいてふわふわだ...不思議な感触だ
もっと触れたい...
葉を早々に取り除き、今度はその白い頬に手を滑らせる