第22章 *閑話カームデイ1 ~リドル~*
ああ、なんて眩しく綺麗な笑みなんだ..
トレイ『失礼。持ってきたぞ』
ワゴンを押しながら戻ってきたトレイは、テーブルの上に例のものを乗せた皿を置くと、そっと蓋を外した
『イチゴの...タルト...?』
そこにはツヤツヤと真っ赤に熟したイチゴがいくつも盛られた鮮やかなタルトが顔を見せた
さすがトレイ。いつにも増して美味しそうだ
気に入ってもらえたかな...?ボクが食べたいものを選んでしまったが、もし彼女がイチゴを嫌がったらどうする...
だけどそれはすぐに杞憂だと分かった。だって彼女の瞳はキラキラと輝き、黒い小さな耳が楽しげに揺れていたから
トレイ『そして、もう1つ。リドル』
リドル『ああ』
急に席を立ったボクに小首を傾げるレイラを横目で見つつ、ボクは紅茶とミルクを淹れると彼女の前にコトンと置いた
『ミルクティーだ..』
リドル『前に好きだと言っていただろう?だから淹れてみたんだが...お気に召したかい?』
『ん...良い匂い』
良かった...
心から安堵して、思わず息をはくと横にいるトレイがまた笑った気がした
トレイ『これで俺の役目は終了。終わったら連絡をくれ、送っていくから』
リドル『分かったよ。ありがとう、トレイ』
『トレイさん、ありがと。タルト、いただきます』
トレイ『どうぞ。じゃ、二人ともごゆっくり』
リドル『本題に入る前に1つ、良いかい?』
『ん?』
リドル『今日のためにいきなり呼んでしまってすまない。もしかして今日は元々予定が入っていた、とか。その...来たくなかったと。来ないものかとも考えていた。手紙も君が来ることを強制しているような書き方だったから...』
我ながら本当に情けない。今のボクには厳格も何もない
『ううん。私もお話したかった。リドルさんのこともっと知りたいし、私の事も知って欲しかったから』
リドル『そう言ってもらえると、嬉しいよ』
気を取り直して、ボクと彼女の二人きりのお茶会は静かに始まった
最初に改めてこれまでの謝罪とあの日の感謝を告げると、彼女からもボクに対する謝罪が返ってきた
互いを理解せずに己の価値観だけで物を言ってしまった...そういうところは、ボクも彼女も心から後悔している