第22章 *閑話カームデイ1 ~リドル~*
リドル『焦りすぎた。あぁ本当にボクは...何をやっているんだ』
一人椅子に腰掛け頭を抱える
遠回しに、いやほぼ直接と言っていいぐらいだ。彼女に"生まれてきた"ことを責めるような事を言ってしまった
だが彼女はボクを"許す"と言ってくれた。その寛大で優しい心に感謝して、何とかそれを伝えたくて今日を迎えたというのに..
リドル『はぁ..』
こんなところを他の寮生に見られてしまったら、きっと驚かれ情けないと笑われるだろうな
ダメだ、そんなところは見せられない
よし、彼女が来なかったらその時は日を改めよう。気持ちを切り替えてその日に臨めばいい
トレイ『ほら、もうすぐ着くぞ』
『ん...楽しみ』
来た。彼女が来てくれた...
自然と口がニヤケてしまうのを必死で抑えながら、薔薇の迷宮から聞こえてくる彼女の声に反応して、ガタッと椅子から立ち上がった
服の乱れは...ない。よし
リドル『やぁ、よく来たね。さぁこちらへ来て座るといい』
声は裏返ってないか?大丈夫か?
ボクが緊張しているのを分かっているのか、トレイはボクを見て若干笑っている
彼女が席に座り向かい側にボクも座ると、傍らに立つトレイにお茶の用意をするように指示する
リドル『トレイ、例のをお願いするよ』
トレイ『はい、寮長。頑張れよ...』
小声で言われボクは居住まいを正すと、改めて彼女と向き合った
今は、二人きりだ...
だが会話の出だしが出てこない...こんなに会話とは難しいものだったか?
お互いに沈黙してるせいか、ただただ穏やかな風が吹き抜けるだけだった
早く何か彼女に気の効いた事を言わなくては...
『リドルさん』
リドル『な、なんだい?』
『今日はお茶会に招待してくれてありがと』
リドル『礼には及ばないよ。手紙にも書いてあっただろ。これは謝罪と感謝の証だ』
少しは笑ったらどうだリドル。彼女に怒っているように見えてしまったらどうする?
『そのためにこんなに綺麗な会場の飾り付けしてくれたの?』
リドル『い、いつもパーティーの時はこんなものだよ』
『そう?それでも...嬉しい』
小さく笑う彼女。その瞬間、花が咲き綻んだたように世界が色づいて見えた