第110章 *終曲ディアソムニア*
『..お返事はやっぱりいい。きっとお姫様が助けてくれたんだって思うことにするから。
ずっとお礼が言いたかったの。
あの優しい光と声で、私を助けてくれてありがと』
その言葉にもマレノアは何も答えない。一区切りついたことでステップが止まり、ダンスを終えた周りからはザワザワと談笑の声が大きくなっていく
『ダンス、楽しかった』
マレノア『....』
『ぇ..わっ!』
一礼し去ろうとした腕にふわっとした物が触れ、振り向くと目の前に至近距離の美しい顔が迫っていた
『『『『!!!!』』』』
いたずらっぽい瞳が弧を描き、柔い何かが口の端に触れる。それが彼女の唇だと気づいたのは約5秒後のことだった
マレノアの背後で驚いたり唖然としたりと、それぞれの反応を見せるリリアたちの表情に、ようやく何をされたかに気づき、熱が一気に顔を真っ赤に染め上げる
『〜〜〜っ///ぇ、あの、お姫様..?』
マレノア『♪』
セベク『い、今..マレノア様がレイラに、く、口づけを!?』
リリア『あいつ、一体何を考えて....む?』
マレノア『....』
突然のキスに困惑するリリアたちに、振り返ったその表情はしてやったりと言わんばかりの笑み。今にもあの甘く恐ろしい笑い声が聞こえてくるような表情に、一筋の冷や汗が伝い落ちる
リリア『挑発しておるのか、それとも純粋な感謝の印か....やってくれたのう。
というか待て。やっぱりなんかあやつだけ変ではないか!?』
『ぁぅぅ///』
びっくりするほど熱を持った頬を両手で押さえながら、リリアたちをからかう楽しそうなマレノアを見上げる。仕草1つ取っても絵になるような美しさに、ひと目見たときから胸の奥に芽生えていたある決意を彼女に伝えることにした
『ーーお姫様』
マレノア『?』
『私...いつか貴女みたいになりたい。綺麗で、かっこよくて、強くて、大切な人に守られるだけじゃなくて、守れるような人になりたい。そのために、もっともっと強くなるから』
人間のくせに不敬だと怒られるかもしれない。一抹の不安を抱えながらも真っ直ぐに自分の思いを伝えると、透けた手が静かに首筋を撫でる