第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
ユウ『...っ!....レイラっ!』
『.......ユ、ウ?』
自身の名を呼ぶ声に視線を動かすと、今にも泣き出しそうな顔で覗き込むユウの姿を捉えた
ユウ『良かった。立ち上がってみんなのところに行くんだと思ったらいきなり座り込んじゃうし、またあの時みたいに倒れちゃうんじゃないかってすごく心配したよ』
『........ん』
ユウ『大丈夫..じゃないよね。無理して立たないでいいよ。ああもう、こんなボロボロになって....でも、ほんとにすごいよ。たくさん、』
『ユウ』
ユウ『ん?なぁに?』
『...............ぎゅ..して』
ユウ『うん。勿論だよ』
俯いた顔に映る表情は分からないまま、傷だらけの体をそっと抱きしめる。しかし、一見いつもの甘えに見えるその仕草や言葉に何処か違和感を覚えた
ユウ『(なんだ、この感覚)
ほんとに酷い怪我だ。痛いよね..すぐに治してあげられなくてごめん』
抱きしめて距離が限界まで近づいたことで、体中の傷がより鮮明に目に飛び込んでくる。制服は所々裂けその奥の肌にまでいくつも切り傷があり、服で覆われていない部分には小さな火傷や傷跡から流れる血まで見える
小さな兎耳の付け根にもドロリとした鈍いツヤが見え、明らかに切っていると漂う微かな鉄の匂いも相まって気づいた
ユウ『耳まで切って..痛そう。本当によく頑張ったよ。えらいね、レイラ』
『....はぁぁぁ.....
あぁ..もう、つかれた』
長い溜め息の後に溢れた言葉は驚くほど低く、それは先程までの戦いだけに言っているようには聞こえなかった
まるで夢も現実も関係なく、ありとあらゆる何もかも全てに疲れたと捉えてしまうほど、その声は酷く暗く疲れていた
ユウ『!..そ、そうだよね。本当にお疲れ様。
そうだ、こんなところにずっといるのもあれだし、向こうに行こっか!みんなに会いたいでしょ。
リドル先輩にも..会いに、行く?』
その問に瞳のくすみが一段と強くなる。肩口に埋めた顔をあげないまま、少しの沈黙の後ゆっくりと口を開いた
『.....いい。
今あの人には................会いたくない』