第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
『ーーーっ!!!くやしい..っ!』
グッと掴んで引っ張ってみても外れないことは分かっている。自ら無理を言って挑んだ手前、誰より先に首輪をはめられ吹き飛ばされたことに、己の無力さを痛感し涙をこぼしながら拳を叩きつけた
『(また、何もできなかった!リドルさんを止めることも、デュースに魔法を撃たせてあげることも、オルトの助けになることもできなかった!)
デュースが、オルトがやられちゃう..はやく、はやくなんとかしないと!』
ユウ『レイラっ!!』
グリム『ふなっ!あの首輪がはめられちまってる!それにおめー、ボロボロじゃねぇか。血まで出てるんだゾ!』
ユウ『!酷い怪我..こんなになるまで無茶して!』
エース『っ、レイラ..』
戦いの激しさを物語るような、ボロボロになった服や白い肌に走る無数の傷跡、そこから滴る赤く細い血の線に肝が冷え、ユウとグリムは急いで駆け寄っていく
『...っ、ユウ、グリム。よかった、みんな無事、で....
エース?体が、光ってる..』
ユウたちの無事に安堵しながら、その2人の後ろで立ち尽くすエースの姿を捉えると、彼の体から魔力の光が溢れていることに気づき、深紅の瞳が見開かれる
魔封じの枷をされていても感じることのできる魔力の強い匂いに、すぐにその正体に気づいたレイラはゆるりと顔を上げ、困惑に揺れる彼を見つめた
『もしかして、エースのユニーク魔法が..』
ユウ『そうなんだよ。デュースの時もエペルの時も、同じ光があったよね。きっとこれも、それと同じなんだ』
『す、すごい。それなら、デュースやオルトたちを助けられる?リドルさんを助けられる?』
エース『っ、で、でも!オレ、自信が...もし、失敗して..2人ともやられて、みんなやられて、全員やられたら..っ!!』
『......』
いつも強気で自信満々で生意気な彼らしくない、恐怖と不安に怯え震える姿に、レイラは驚きと同時にどこか妙に納得するものがあった
小器用に生きている彼が、誰よりも不安を抱え失敗を恐れ、その先に待つ絶望を想像して足を止めてしまう、ごくありふれた"普通の人間"らしい人なのだと
『エース..』