第106章 *熱中ベイキング(トレイの夢)*
エース『え〜!?マジでオレら、終盤じゃん。なんだよ、ユウ、レイラ。いつもは困り事があればすぐにオレらに頼ってくるくせに。冷たいじゃん』
ユウ『あんだけ起きるの渋ってたやつがなんか言うとるわ..』
ニヤニヤとした意地悪な笑みにチベットスナギツネのようなジト目を向けると、レイラは申し訳無さそうに耳をシュンと垂らした
『ごめん。最初のときは誰の夢に行くか選べなくて..』
シルバー『俺のユニーク魔法は、誰の夢に渡れるかは運次第..オルトやS.T.Y.Xの人々の導きがあって、ようやく行き先を定めることができるようになったんだ』
オルト『現在はマレウスさんの魔法領域に囚われている人々の夢にIDを振り分ける作業もかなり進んでいる。そして不安定だった霊素シグナルトラッキングも、回数を重ねるごとに精度が上がって..
今は10人程度なら、危なげなく霊素を転送することができるようになっているよ』
イデア『最初の頃はバグに怯えながら、誰かいなくなってない?とか何かなくなってない?みたいな確認しながらの移動でしたからな..』
エース『え、何それ。こわ..』
グリム『うんうん。そりゃもう危ねー旅だったんだゾ。オレ様たちは何度もピンチを乗り越えながらここまで来たんだ。どうだ、すごいだろ!』
セベク『偉そうに。まるで貴様1匹で苦難を乗り越えてきたかのような言い草じゃないか、グリム。右大将であるリリア様やお祖父様..そして行く先々で仲間に加わった人間たち。彼らの助力があってこそ、僕らはここまで辿り着けたというのに』
シルバー『セベクの言うことはもっともだが..まだセベクやレイラと合流するよりも前、グリムはひとりで危機を乗り越えたこともある』
セベク『え?』
『そうなの?』
シルバー『最初に俺がグリムたちと夢の中で出会った時のことだ。夢の主が覚醒し、夢の世界が崩壊していく中..グリムは大量の闇と対峙していた。ユウを後ろに庇いながら、たった1人で。
混乱の中で、諦めず戦った勇気。それがなければ、あの危機は乗り越えられなかっただろう』