第105章 *足跡ビーチ(エースの夢)*
デュース『そうっすね。黒兎ってことがトラブルの原因にならないようにって、普段から学校の外にはあまり出ないし、ここに入学する前もずっと家の中にいたらしくて..
だから、今はこんな状況だけど、こういう景色や場所に来られてすごく楽しいんだと思います』
澄んだピーコックグリーンにはしゃぐレイラの姿が映り、熱を帯びた瞳は愛おしいものを見るように優しく細められていく
ケイト『..うん。楽しそうなあの子を見てると、なんだかオレもホッとする。
現実の世界でも、周りのことなんて気にせず自由に楽しみながら、綺麗な景色や美味しいもの食べて、心から笑えるように色んな所に連れて行ってあげたいね』
デュース『はい』
『『『......』』』
まるで独り言のように呟かれた声は風に乗り全員の耳に静かに届く。眩しい陽の下で咲いた1輪の笑顔の花はほんのひとときの安息を与え、湿気からくる暑さなど気にならないほどに、それぞれの胸と瞳に熱を灯した
『んへへ。お水キラキラですごく綺麗。ね、ユウ?』
ユウ『あーーー可愛い。うんうん、そうだね。でもあんまり奥に行かないで。はい、そこでおしまい』
『むぅ。私、ちっちゃい子じゃないよ。それに、まだ足首だけだし..』
ユウ『だぁめ。海も川もそうだけど、膝にいかない深さでも十分危ないんだよ。レイラみたいなちっちゃくて可愛い子は、あっという間に流されちゃうんだから。ね?』
戻ろうね、と手を引かれ渋々波打ち際まで戻ると、少し不満そうにパシャリと足踏みで水を跳ねさせた
ユウ『それにしても、いきなり海に入りたいなんて言うから、ビックリしちゃった。でもレイラって海は初めて...じゃないよね?』
『ん。でもこんなに綺麗なのは初めて。だからちょっと遊びたくなっちゃって..ごめんね』
ユウ『可愛いからいいよ』
上目遣いで謝られ途端にキリッとし始めたユウを可笑しそうにクスクス笑うと、海からあがりギュッと抱きついた
『..ユウ、大好き』
ユウ『僕も大好きだよ』
『ん..』
ユウ『どうしたの?』
なにかに耐えるように背中に回った手が強く服を掴み、顔を埋めたまま動かない様子に問いかけると、小さな口を開けて静かに呟く
『エースに、会いたい』