第103章 *抗争ファクション(デュースの夢)*
セベク『トランプ兵物語?そんなタイトル聞いたことがないぞ』
オルト『僕も読んだことがないかも..レオナさんは』
レオナ『さぁな。もし読んだことがあったとしても、くだらない児童書の中身なんざとっくに忘れちまってる』
ユウ『レイラは?』
『ううん。私もこれ知らない』
デュース『薔薇の王国じゃ結構有名な本だと思うんだけど..別の国じゃ、マイナーなのか?ハートの女王に仕えるトランプ兵たちにまつわる伝承を元にした短編集で、登場するトランプ兵がすげーかっこいいんだ。
特に法律の違反者を追いかけて、女王と一緒に迷路を走り抜けるシーンが臨場感があって最高でさ』
セベク『ほう..?』
デュース『小さい頃、母さんにせがんで寝る前に何度も読み聞かせてもらったっけ。文字が読めるようになってからは、この1冊だけは自分でも繰り返し読んで..懐かしいな』
夢中になって読んでいた昔を懐かしみ表紙をなぞりページを捲っていくと、見ていたシルバーはあることに気づいた
シルバー『!!デュース。この本、最後までページが埋まっているぞ』
セベク『本当だ。文章も挿絵も、くっきりと印刷されている』
グリム『にゃははっ!デュースにも1冊は最後まで読めた本があったってことか』
『何回も何回も読んで覚える。デュースの良いところが出てるね』
デュース『ありがとう、レイラ』
セベク『..ふむ。子供向けの易しい文章だが引き込まれる導入だ。挿絵も美しいな。
なになに?トランプ兵が証人として裁判所に連れてきたのは、ティーポットに入った小さなネズミで....はっ!』
気になる文を読んでいるうちに次第に続きを無言で追いかけ始め、慌てて我に返り隣を見ると、自分の好きだった本に興味をもってくれたことに嬉しそうに笑みを浮かべるデュースと目が合い、羞恥心やその他諸々の感情に襲われ、咳払い一つしてそっと本を閉じた