第16章 *百獣コンフリクト*
ナイトレヴンカレッジの制服に身を包み、黄緑色の宝石と腕章をつけたその青年の頭には、獣耳とは違うどこか威圧感を与えるような、硬い曲がった角が二本生えていた
?『...ん?そこにいるのは誰だ?』
掠めるような低音で、その青年はユウ達の所へ近づいてきた。近くに来たことで、彼の身長の高さがより感じ二人は思わず半歩下がった
『キレイ...レオさんと似てるけど、ちょっと違う宝石みたい』
オンボロ寮の薄明かりの外灯に照らされた青年の瞳。それはレオナの瞳よりも少し明るい緑の燐光が妖しく輝きレイラの心を惹き付けた
ユウ『ゆ、幽霊!?』
?『これは驚いた。お前達、人の子か』
青年は珍しいものを見るような目で二人を交互に見つめた。冷たい風が彼の闇を思わせる長い黒髪をたなびかせ、それは目を見張るほどにどこか美しさを感じさせる
?『お前達、ここに住んでいるのか?この館はもう長いこと廃墟だったはず。独りで静かに過ごせる僕だけの場所として気に入っていたのだがな』
ユウ『貴方は誰ですか?』
?『誰って...僕のことを知らないのか?本当に?...ふぅん、そうか。それはそれは...珍しいな。お前達、名前はなんという?』
自分を知らないと言う二人に、僅かに目を丸くした青年だったがすぐに面白そうな物を見た笑みへと変えた
ユウ『この寮の監督生のユウです』
『レイラ・フィリアス...』
青年を警戒しながらも名乗るユウ、そしてユウの背に隠れながら小さな声で名乗るレイラ。そんな二人の様子に青年は笑みを深くさせた
?『随分と警戒されているな僕は。特に...そこのウサギ』
青年の瞳がユウの肩越しに見えるレイラへと注がれる。瞬間ビクッと体を震わせユウのブレザーをギュッと握った
ユウ『この子、初めての人にはいつもこうなので』
?『成る程...にしても黒髪に黒耳、そして血を垂らしたようなその深紅の瞳。お前、あの黒ウサギか?』
『っ....』
?『そう身構えるな。僕は別に黒ウサギを嫌っている訳じゃない...そうか、お前が"今"の黒ウサギか』