第101章 *奮起シーフ(ラギーの夢)*
かつての彼を彷彿とさせるヴィラン顔で追い詰めていく。金への欲望を唆す言葉がラギーの記憶を呼び覚ましていく。あまりに激しい頭痛に耐えきれずその場に膝をつくと、頭を押さえる両手を震わせ叫びにも似た嘆声が響き渡る
ラギー『う、ううっ、オレは、オレは...っ!!ああ、頭が割れるぅ..!
ああ、あああ..
うあああああああああああ!!!!!』
堰き止めていた記憶が一気に流れ込み、ラギーの脳裏に様々な思い出が蘇る。
マジフト大会、他寮の選手に怪我を負わせたこと。その策が失敗に終わりオーバーブロットしたレオナを止めたこと。そしてS.T.Y.Xに拐われたレオナが無事に戻り、ジャックと迎え入れ3人で笑いあったこと
鮮明に蘇る記憶が完全に彼を覚醒させ、大きな音を立てて夢の殻が割れ落ちた
ラギー『はぁ..はぁ..あ、あはは..思い出した、全部..オレ、どうして..』
?『おい、ラギー!?なんで水になんか飛び込んでるんだよ!』
?『様子がおかしかったから心配になって戻ってきてみりゃ..何やってんだ、一体!』
心配し戻ってきた学友たちは、水路に飛び込み全身ずぶ濡れになっているラギーに目を見開いて驚き、上がってくるよう手を伸ばす。しかし、彼がそれを取ることはなく、手にした硬貨を強く握りしめた
ラギー『500マドル..』
『『え?』』
ラギー『500マドルが、水に落ちるところだったんす..』
?『な、なんだよ500マドルくらいで..』
ラギー『500マドル"くらい"?』
その言葉にラギーは大きな耳をピクリとさせると、ゆっくりとその場で立ち上がっていく。水を吸い込んだ制服が重みとなるが、今の彼にとってはどうでも良かった
ラギー『500マドルあればさぁ..食堂でサラダつきエビグラタンセットに、オプションでカニクリームコロッケとエッグマフィンがつけられるんすよ..』
?『は?何言ってるんだよ。うちの学食は全部タダだろ!?』
ラギー『"オレら"の学校は国立でも王立でもねぇから、基本メニュー以外は全部自費。ケチくさいったらねぇよ。制服や運動着だって、最初の1着はくれるけど、それを駄目にしちまったら自分で買わなきゃならねぇ』