第101章 *奮起シーフ(ラギーの夢)*
その瞬間、ラギーは信じられないものを見るような目でアズールを見上げる。この夢に浸っていた彼ならば、たかが500マドル硬貨を投げ込もうとさして気にはならないはずだったが、覚醒しかけ本来の気質を取り戻しつつある今のラギーにとっては、勿体ないどころかバチが当たるレベルの大問題だった
ラギー『な!ご、500マドル..そんな大金を!?正気っすか!?いや、違う!500マドルは大金なんかじゃ..小銭のはず..ううっ!』
アズール『手持ちのコインがこれしかなくて、でも..
"たかが小銭"でしょう?』
ニヤリとした悪い笑みでコインを持った手を大きく振りかぶると、ラギーはふるふると小さく首を横に振り"やめてほしい"と言外に訴えてた
しかし、それでやめるようなアズールではなかった
アズール『では、いきますよ!』
ラギー『や、やめ..やめてくれ..!』
アズール『そらっ!』
ラギー『うわああああああああぁあぁあ!!』
放物線を描きながら500マドル硬貨が頭上を越えて水路へと向かっていく。まるでスローモーションのように飛んでいく硬貨を目で追いながら、ラギーは大絶叫しながら走り出すと、体が濡れるのなど全く気にもとめず、水路に勢いよく飛び込んだ
『わわわっ、ラギさんが..』
ジャック『うわっ。ラギー先輩がためらいなく水に飛び込んで、500マドルを掴んだ!』
グリム『すげぇ執念なんだゾ..!』
あまりの必死さに呆然としていると、アズールはその笑みを絶やすことなく、寧ろ更に深めて水路の方へと歩いていく
アズール『ふっ、ふふふ..ははは!要らぬ要らぬと言いながら、体は正直ですねぇ!本当は欲しくてたまらないんでしょう?素直になりましょうよ、ラギーさん!』
オルト『アズールさん、ラギーさんを覚醒させるためにやってるのは分かるんだけど..』
ユウ『完全にその筋の人っていうか..完全悪役なんだけど』
『アズさん、すごく悪い顔してる。でもこれならラギさんもきっと..』
アズール『我慢は体に悪いですよ。素直に言えばいいじゃないですか。欲しくて欲しくてたまらないと!』
『ユウ、なんで私の耳押さえるの?』
ユウ『なんかレイラの教育上、悪い気がして...』