第101章 *奮起シーフ(ラギーの夢)*
『ユウ、座り込んでどうしたの?気分でも悪い?』
ユウ『さっきまで悪かったけど今は大丈夫だよ。それより、ちょっとこっち来て抱きしめてくれる?そうしたら、もっと元気になれるから』
『分かった』
アズール『僕も後でお願いしてもいいですか?』
『ん』
謎のひと悶着を終え、話は夕焼けの草原の歴史、もとい獣人たちの歴史についての話となった
獣人と聞いてふとラギーの祖先でもあるハイエナの彫像がないことが気になったグリムが問いかけると、かつてライオンの王に使える前は、ハイエナは影の国と呼ばれる自治区にいたとされ、恐らくその時をモチーフにしたからだとジャックは語った
それを聞いて、セベクは昔バウルから聞いた話を思い出した。現在1つの国となっている夕焼けの草原は、その昔は様々な種族が暮らしていて、獣人だけでなく夜の眷属の妖精もいたとされた
そんな多種多様な種族が現在でも暮らす夕焼けの草原。オルトの調べでは現実のこの国は今、行政が提案する地域活性化や都市開発計画を巡り、国民との話し合いが続いていた。土地の開拓や採掘を行えば今より国は潤う反面、伝統的な生活を守りたい国民も多く、意見が激しく対立し、どちらの意見もないがしろに出来ないため、時間をかけて議論がかわされている
その話にイデアは、少し前にレオナがインターン先に鉱業・エネルギー系の研究所を選んでいたことを思い出し、この国の行政の大変さに静かに同情した
グリム『んん?なんか難しい話ばっかでよくわかんねぇけどよ、つまり..この夢の主はレオナってことか?』
オルト『ううん、違うよ。この夢の主は..』
ダダダダダ....!!
ラギー『やばい、やばい!寝坊したっす!遅れたら皆勤賞に傷がついちまう!どいたどいたー!』
もはや定番となりつつある先を急ぐ足音に振り向くと、少し離れた先で人混みを駆け抜ける人影を見つけた
ふわりとしたブラウンの短髪、丸みを帯びた大きな獣の耳、そして何よりも聞き覚えのある高めの声にジャックは目を見開いた
ジャック『あれは、ラギー先輩!?』
『ほんとだ。あれ、でもなんか違う..』