第99章 *追跡マーメイド(アズールの夢)*
『私がいいよって言ったからいいの。
ぁぅ..でも、もう一個お願い聞いてほしかった』
アズール『最初に一つと言ったでしょう。一応聞くだけ聞かせてもらっても?』
首を傾げて問うと、さっきの笑顔が少し翳りを見せ、今度は遠慮がちに言葉を紡いだ
『....私のこと、好きでいてほしい』
アズール『....』
『夢の中のアズさんには嫌われちゃって、ちょっと悲しかったから..』
アズールの肩に添えられた手に力が入ると、悲しげにそっと目を伏せた。誰よりも愛されたいという想いが強いということを知っているアズールは、夢の自分に好かれなかったことがどれだけ嫌だったか手に取るように分かる
だからこそ、アズールはその願いに首を横に振った
アズール『..それについては、もう願う必要はありませんよ。なぜなら..』
背中から後頭部に手が上がり少し引き寄せられると、頭の上の耳に唇が触れる
アズール『僕は既に、貴女を心から愛していますから』
『!』
アズール『今さら願わなくとも僕はあの頃から..一目見たときから貴女のことがずっと好きなんですよ。さきほど拒絶されたとき、ショックのあまり一瞬頭が真っ白になりましたから』
『そう、なんだ..良かった』
アズール『それについては寧ろ、こちらからお願いしたいくらいです。
僕の事は許さなくてもいい。ですが..どうか、嫌いにならないで..好きでいて。
お伽噺の人魚のように、海の泡にしないで』
お願い、と普段の彼からは想像できないほど弱々しく他者に請い願う姿にビックリしながらも、彼の首にかかるストールを引き寄せ、触れるだけのキスを落とした
アズール『!』
『ん..好きでいるよ、アズさん』
ふわりと微笑み離れようとすると長い腕がそれを許さず、逆に強く抱き込まれる
アズール『..足りません。もう一回、キスをしてください』
『んふふ。いつものカッコいいアズさんも好きだけど、甘えん坊のアズさんも可愛いくて好き』
強請る唇にもう一度キスをすると今度は少し長めに触れ合い、柔らかい感触と温もりに浸る
いつの間にかレイラに翻弄され呑まれている自分に呆れながらも、アズールはそれでも構わないと抱く力を強めた