第99章 *追跡マーメイド(アズールの夢)*
寮服の帽子を外し片膝をつくと、頭を深々と下げる。あのアズールがあそこまで深く謝罪するとは思わず、全員が目を丸くした
アズール『夢に囚われていたとはいえ、僕がしたことは許されるものじゃないことは重々分かっています。こうして謝っても、貴女が感じた恐怖がすぐに消えないことも...
ですが、貴女に嫌われたままでなんていたくない』
灰色がかった海の瞳に真っ直ぐ見つめられ、レイラは伏せていた顔を少しだけ上げる。自分の方を見てくれたことに嬉しそうに顔をほころばせながら、そっと手を差し出した
アズール『触れてもいいですか?』
『....ん』
長い沈黙の後に小さく頷くと、アズールはゆっくりとレイラの手を取り優しく握る。その瞬間ピクリと肩が跳ね上がるが、拒絶も振りほどかれもしなかった
アズール『温かい手だ。それに、小さくて美しい..』
滑らかな肌の触り心地にうっとりしながら、手の甲にキスを落とすと、もう片方の手を伸ばし肩に触れる
パリパリッ..!
アズール『っ..』
『!ぁ、ご、ごめんなさい..っ』
アズール『いいえ、構いませんよ』
先程よりも威力の弱い無意識に弾けた静電気に顔をしかめる。それでも肩に置いた手をそのままに、アズールはレイラを抱きしめた
小さく華奢な体はすっぽりと腕に収まり、包み込んでくれる温もりに、強ばる心が緩やかに解かれていく
アズール『やっと、貴女をこうして抱きしめられた』
『ア、アズさ..』
アズール『はい』
『や、って言って、ごめんなさい..ビックリさせて、ごめんなさい』
アズール『貴女という人は....いいんですよ、謝らなくとも。それに、今聞きたいのは謝罪ではなく、僕にどうしてほしいかです。
何かしてほしいことや欲しい物はありませんか?今回のお詫びに1つ、何でも言うことを聞きますよ』