第98章 *海中サーベイ(ジェイドの夢)*
だが、夢の中でぞんざいに扱ってしまったことが枷となり、そんなことがあった上でなんと返そうかと、口が思うように動かない
やっと絞り出した言葉は『はい..』の一言だけ
だが、たったその一言にもレイラは嬉しそうに顔をほころばせながら、身を乗り出し背の高いジェイドの耳に口を近づけた
『じゃあ私、頑張るね。
ーージェイさんが私のこと、もっと、もーっと好きになってくれるように』
ジェイド『!!』
色を含んだ甘い囁きが誘惑するように全身に刺激を走らせた。その瞬間、全身の鱗が逆立つ感覚がして、耳、腕、背中のヒレがぶるりと震える
歓喜、興奮、期待、恐怖
何てことない言葉に込められた想いが与えた、ぐちゃぐちゃに混ざりあった感情に目をとろりとさせながら、込み上げる笑いに喉を鳴らす
ジェイド『くっ、ふふ、ふふふふ。本当に、貴女という人は。まるで僕を従えようとしているように聞こえますね。
ですが、いいですよ
"キュ"
では楽しみにしておきます
"キュー"
僕が貴女に飽きるまで
"キューキューキュー"』
『んふふ、楽しみだね』
フロイド『いや求愛音うっせーし。言葉と合ってねぇんだけど。つか、いい加減ゴマちゃんこっちに寄越せよ』
『あっ、ごめんねフロさん。今そっちに..ぁぅ?』
振り向こうとした体を元に戻され、再び頬にザラついた肌が触れる。しっかりと腕と尾ひれに抱き込んだジェイドはどんどん深くなるフロイドの眉間のシワに笑みを深める
フロイド『おい、何してんだ?』
ジェイド『いいでしょう?』
フロイド『良くねーよ。さっさと寄越せって言ってんだろうが』
ギィィィィィ..!
ジェイド『おやおや。焦るオスはモテませんよ、フロイド』
ギィィィィィ..!
フロイド『潰す』
威嚇音が両側から鳴り響き、本日何回目の険悪ムードにレイラはオロオロしながら必死にどうしようかと思考を巡らせる
『(ぁぅ..ど、どうしよう。また喧嘩しちゃう...えっと、えっと..)』
ピキピキとすぐ近くで鳴った音に目を向けると、ジェイドの耳のヒレが不機嫌そうに小刻みに揺れ動いていた