第98章 *海中サーベイ(ジェイドの夢)*
ジェイド『.....』
紡がれようとした口が閉じる。先手を打たれ、言葉の奥に渦巻く複雑な感情を灯した深紅の瞳が、いつものように優しく甘い言葉をかけようとした彼に初めて、目の前の小さな兎が恐怖を与えた
このまま貼り付けた言葉を吐けば、確実にあの目に拒絶され自分から離れて行ってしまう。夢では自分から離れたのもあって、それでも構わないと頭では思うも、心の何処かにそれだけは絶対に嫌だと叫んでいる自分がいる
その心の声に従い小さく息を吐くと、真っ直ぐにその目を見つめた
ジェイド『...分かりました。では、正直に言いましょう。確かに僕は、貴女にそこまでの興味はありません....出会ったあの頃は』
『あの頃?』
ジェイド『泣いていた貴女が、アズールに連れて来られたあの日です。あの時は、笑ってほしいなどと弱っていた貴女に心地のいい言葉を贈っておきながら、内心は興味はありませんでした。というより、どうでも良かったんです』
『....』
ジェイド『2人が興味津々だったので、それに便乗して面白そうだと思い貴女に接していました。特にアズールがご執心で、貴女の一挙手一投足に感情を動かされているのを、ただ面白おかしく見ていただけ。その後も、貴女に対しての感情は、楽しみを提供してくれる玩具のように思っていました。
ーーフロイドの言う通り、僕は興味を失うとあっという間に手放してしまう気質なので、貴女のこともいずれ、この世界でそうしたように手放すのでしょうね』
痛いほどの静寂が辺りを包む。遠慮なく放たれた偽りない言葉に、レイラの胸は複雑な思いがいくつもぐるぐると渦を巻く
悲しみや怒りを上回る戸惑いに顔を伏せると、広い胸に手を添え額をコツンと当てた
ドク、ドク、ドク
ドク、ドク、ドク
フロイド『あーあ。ゴマちゃん泣いちゃった。完全に嫌われたじゃん、ジェイドォ〜♪』
ジェイド『うるさいですよ。正直に話してほしいと言われてそれに従っただけです』
ドッ、ドッ、ドッ
ドッ、ドッ、ドッ
『(...速い。ジェイさんの、音)』
胸に添えた手や触れる額から伝わってくる速まる鼓動に小さく笑みが溢れる
言葉に偽りはない。だが、それによって彼がこんなにも緊張し戸惑っていることに逆に安心感を覚えた