第97章 *接触アパシー(フロイドの夢)*
珊瑚の海−海上
ザアァァ....
『海..』
ユウ『だね』
オルトの導きで次に辿り着いた場所は、一面の鈍色の大海原だった。辺りに島や大陸の姿は見えず、ただ穏やかな波の音が広がる
ユウ『とりあえずどこかに降りません?ずっと空中は正直キツい』
ジャミル『そうだな。少し待っていてくれ..そら!』
ペンを海面へと振ると冷気が集結し始める。海水の一部が球体に浮かび、やがて氷の塊となり中型のボートへと変形した
セベク『おお!海水が凍り、みるみるボートが出来ていく。人数分の座席まであるぞ』
シルバー『良いアイデアだな、ジャミル。では俺は櫂を..はっ!』
ジャミルに合わせるように警棒を振り、海水の一部を切り取ると漕ぐための一対の櫂の形へと凍らせていく
ジャミル『これくらいのサイズがあれば、ボートに全員乗っても大丈夫そうだ』
シルバー『よし、櫂ができたぞ。柄を握る時に冷たいが、ないよりはいいだろう』
オルト『さすがは2年生の先輩たちだ。頼りになるね』
手放しで褒めるオルトに抱えられながら、グリムとセベクは複雑そうに顔をしかめる。だがジャミルは驕る様子もなく全員をボートに降ろすようオルトに頼んだ
カチンと音を立ててボートに乗り込むと、氷製のためか裸足のグリムの肉球に、ダイレクトで痛いほどの冷たさが伝わる
グリム『うひ〜っ!氷の船で肉球が凍っちまいそうなんだゾ!ユウ、オレ様を膝に乗せろ!』
ユウ『え〜..グリム重いからやだよ』
グリム『なんだと〜!?だったらレイラ、オメーの膝に乗せろ!』
『ん、いいよ。おいで』
手を広げると直ぐ様膝に飛び乗り、グリムはその体温がジワジワと足を温めていく感触に顔をほころばせた
グリム『よしよし、さすが子分なんだゾ〜。ふなぁ、あったかくて柔らかくて良い匂い』
『んふふ、いい子いい子』
腕の中で優しく撫でられ、ほのかに薫る甘い匂いと心地の良さに目の前の胸に顔を埋めて堪能する
ユウ『は?うらやまなんだけど???』
ジャミル『右に同じくだ』
セベク『おい、レイラ。あまりグリムを甘やかすな。それで?どうして僕たちは急に海の上に放り出される羽目になったのだ?』