第96章 *盛況アライブ(ジャミルの夢)*
紅く澄んだ瞳が二人の殴り合いを映す。互いに想いをぶつけ合い、何度殴られてもその分やり返していくため、その顔や体に傷を増やしていく
大切な二人が傷ついていくことに、恐怖も嫌悪も感じていないわけでない。だが、それよりも大事な二人の"会話"を邪魔してはいけない、目を逸らしてはいけない、という思いがそれを上回っていた
初めて互いを殴り合い、両者はその手に内出血を滲ませながら荒く息を吐いた。先に根を上げ始めたのはカリムの方だった
カリム『いってぇ!畜生、本気でやりやがったな!頭がクラクラしてきたぜ..っ!』
ジャミル『ならいい加減降参したらどうだ。それで、さっさと実家に帰れ!』
カリム『やなこった!ジャミルこそ、息が上がってるぞ。へへ..へへへ..あっはっは!!』
ジャミル『!?こんな状況で、何を笑っている?』
カリム『なあ、ジャミル!17年一緒にいて、初めてだな。こんな風にお前と喧嘩するのは!』
ジャミル『はぁ!?当たり前だろうが!現実でお前をボコボコにしたら大問題...あっ?』
その言葉を放った瞬間、今までよりも強い頭痛がジャミルを襲った。覚醒の兆しがあともう少しまで迫ってきている証だった
ジャミル『ぐああっ!あ、ああっ!痛っ..頭がっ!現実で..何を言ってるんだ俺は?う、あがっ..!』
カリム『そうだ、これは全部夢なんだよ!頼む、思い出してくれジャミル!本当のお前を!』
ジャミル『そうだ、俺は..俺は、あの日..お前を!あ、あああ..っ!
うわあああああああ!!!!』
割れそうなほどの頭痛が記憶をフラッシュバックさせていく
カリムを裏切り、アズールの罠にかけられ、オーバーブロットを超えて"もう誰にも遠慮しない"と心に決めた
恨みや絶望の先に生まれた決意の思い出が彼を覚醒させた。夢の殻にヒビが入り、大きな音を立てて割れ落ちた