第95章 *灼熱シーク(カリムの夢)*
ヴィル『ジャミルは、あんたの全てを肯定してくれる甘い存在なの?違うわよね。小言が多くて、内心は他人を見下していて..腹に一物も二物もある信用ならない男。あたしだったら、あいつを腹心には選ばないわ。でもあんたは、こっぴどく自分を裏切ったその男と本当の友人になりたいと願い..本当になれると信じていた。
見切りをつけて別の友人を探した方が楽だし、建設的。だけどあんたはそうしなかった。その非合理さが、諦めの悪さが、無神経なポジティブさが..カリムをカリムたらしめる芯であり、あんたの恐ろしさのはずよ。
偽物を掴まされて満足しているなんて、大商人の跡取りが聞いて呆れるわ。腑抜けていないで、さっさと目を醒ましなさい!カリム・アルアジーム!』
ジャミル?『カリム、こっちを見ろ。お前が信じているのは、俺だけのはずだろう!』
ヴィルの言葉に焦りを感じカリムに詰め寄るが、既に彼の頭にはヴィルやレイラの言葉が刻み込まれ、奥底に眠る記憶を勢いよく引っ張り上げる
カリム『ううっ..違う。オレが、オレが信じているのは.. あ、あああ!
あああああああああ!!』
蘇るホリデーでの裏切り、VDCで味わった悔しさ、嘆きの島から彼が帰ってきた時の嬉しさ
思い出が記憶の波となって押し寄せ、回る視界と頭に走る痛みが覚醒へと導く。夢の殻が音を立てて砕け散ると、光が辺りを包み込む
スカラビア寮・談話室
そこは血の海に染まったような真っ赤に染まったスカラビアの談話室。あの日裏切ったジャミルとの決戦の場所だった
カリム『あ、ああっ..!』
ジャミル?『カリム!大丈夫か?すぐに医者に診せよう』
膝から崩れ落ちたカリムに駆け寄り手を伸ばす。しかし、その手は触れられる前にカリムによってパシッと払われた。今までなら絶対見られなかった、初めての拒絶だった
カリム『そうだったな..ジャミルは、昔からいつだってオレを1番に心配してくれた』
ジャミル?『何を当たり前のことを。親友なんだから、当然だろう』
カリム『でも..それはオレがジャミルの主だからで、親友だからじゃない』
一人でゆっくりと立ち上がるその目に涙を流しながら、それでもカリムの目は強い意志を帯び、目の前のジャミルを強く睨みつけていた