第95章 *灼熱シーク(カリムの夢)*
ジャミル?『当たり前じゃないか。何を馬鹿な!そんな恐ろしいこと、考えたこともないよ!
っ!!』
苦しむカリムの問いに目を細めながら答えたジャミルに向かって赤い炎が迫る
気づいたときには、まるでスローモーションのように眼前に迫っていた火球が、彼の垂らした髪の毛先をジリっと焼く
既のところで顔を反らし衝突は免れたものの、その表情には冷や汗がどっと吹き出していた
ジャミル?『な、なんだ!?』
『..ジャミさんの顔で、声で、そんな嘘付かないで。ほんとのジャミさんは、カリムさんのこと..裏切ったんだよ』
火球を放った本人、レイラはユウを背に守りながら、怒りの色を乗せた深紅の瞳を光らせる
ウィンターホリデーの時の彼の気持ちも、吹っ切れたあとの気持ちもどちらもよく分かっているレイラは、裏切ったこともその手段も許される訳では無いが、それでもあのときの彼はそうするしかなかったと
必死に考えて藻掻いてあれに至ったのだと、どうしようもない複雑な気持ちを汲み取り、だからこそ彼の姿を模した闇が、カリムを"裏切らない"。それを"考えたこともない"と言ったのがどうしても許せなかった
グリム『そうだ!オメー、思いっきりカリムを裏切ったし、オレ様たちごと時空の果てまでぶっ飛ばしたんだゾ!』
その言葉に再び空間が歪み、カリムの目の前に夜の荒野が広がる。吹き荒れる凍てつきそうな冷風が体を震わせ、思わず体を縮こませる
カリム『時空の果て..うわっ..さ、寒いっ!なんだこれは!?』
ジャミル?『ああ、可哀想なカリム。厚意で彼らをもてなそうとしたのに、裏切られて気が動転しているんだろう』
動揺するカリムを憐れむように見つめながら息をはくと、片手を彼の肩に置きもう片方の手でカリムの顎を掴み視線を合わせる
ジャミル?『こっちを見ろ、カリム。俺がいれば何も心配いらない..そうだろ?
カリム、俺を信じろ』
ホワンと魔力の波動が視線を介して注がれる。それはあの日、カリムや寮生を操ったジャミルのユニーク魔法ーーー蛇のいざない(スネーク・ウィスパー)だった