第95章 *灼熱シーク(カリムの夢)*
撫でられ気分を良くしたレイラだったが、青カビチーズのクラッカーをグリムに食べさせようとしているカリムを悲しげに見つめた
自分たちや学園のことを忘れて、知らない学校の制服をまとい、従者の話やオアシスの名君の話を楽しそうに話す姿は、性格こそ変わらなくとも彼が全く知らない人間になってしまったようで、寂しさと悲しさ、僅かな怒りを覚え自然と視線が落ちる
ヴィル『レイラ?』
『......はやく、もとに戻って。ほんとのカリムさんに、会いたい』
独り言のようにつぶやかれた願いにヴィルは悩ましげに眉をひそめた。大好きな人が元に戻ってほしいというその願いに、どれほど大きな想いが込められているかを、付き合いは短くともヴィルはよく分かっていた
細く長い綺麗な指が葡萄の房から実を1つとると、俯くレイラの顔をあげさせその口に押し付けた
『むっ!!』
ヴィル『暗い顔しないの。あんたがそういう顔してると、あたし達にまで影響が出るの知ってるでしょ?心配しなくても、さっさと覚醒させてやるわよ。
それでも食べてちょっとでも元気出しなさい』
少し強引ながらもどこまでも自分に優しくしてくれるヴィルの行動に、感情が溢れ出しそうになりながらも、誤魔化すように葡萄を口の中に入れ、広がる甘酸っぱさに少しだけ笑みを浮かべた
食事をしながらカリムとの会話を続け、夢の脆弱性を探していく。その中で、学園生活に不満を抱いた様子もない彼が、何故ナイトレイブンカレッジのことを忘れているのかという疑問に至った
オルトの影に隠れながら思考を巡らすイデアは、もしかしたら彼がルークと似たようなパターンなのではと考えた
イデア『ふぅむ..このパターンはルーク氏のように、ナイトレイブンカレッジに入学するルートで起きる悲劇を回避したルートなるかもしれませんな』
グリム『カリムがナイトレイブンカレッジに入学するルートで起きる悲劇..あっ!』
『カリムさんが一番ショックだったことって、多分..あの日のことだよね』
ユウ『あーー..もしかして、ウィンターホリデーで時空の果てまでイ◯テQされたときのやつじゃ..』
?『お前たち..何を騒いでいる?』