第94章 *夢幻ナビゲート(ヴィルの夢)*
美粧の街・クインズ・パレス
オルト『霊素シグナル・トラッキング成功。指定された座標へ到着しました』
ヴィル『オルト!みんな!あたしはここよ!』
再び夢に降り立つと、少し離れたところでヴィルが手を振りながらこちらへと駆けてくる。その見た目と言葉に、完全に覚醒した状態のままであることが分かり、一同に笑顔がこぼれた
オルト『..どうやら、僕たちの助けはもう必要ないみたいだね』
ルーク『ああ、ヴィル!無事でよかった!』
エペル『お帰りなさい、ヴィルサン!』
今度は二人からヴィルを強く抱きしめ、3人は満面の笑みで互いの無事を喜び合った
ユウ『先輩がそのまんまで良かった、良かった』
『ぅ..ぅ...ん、ん?』
グリム『おっ、レイラも起きたみてーだゾ』
モゾモゾと腕の中で身じろぐと、ゆっくり深紅の瞳が顔を出しぼんやりとした視界が段々と鮮明に変わっていく
『..ここ、どこ?』
ユウ『ヴィル先輩の夢だよ。あれから一回夢の回廊に逃げてから、また戻ってきたんだ。先輩は覚醒したままだから、もう大丈夫だよ』
『そ、っか...もう、大丈夫、なんだ。良かった。ほんとに、よかっ、たぁ...うっ、ぐすっ..』
見上げるユウの顔が涙で歪み、流れ落ちる雫は頬を伝ってポタポタと地面に点を作っていく
ユウ『よく頑張ったね。さ、先輩に会いに行こう?』
『ぐすっ..でも、こんな顔、見せたくない..っ』
ルーク『..ヴィル、君の身を誰よりも案じていた愛らしき小兎を、どうか優しく迎えてくれないかい?』
ヴィル『..そうね。あんなに泣かれてちゃ、そうしないと後が怖そうだから』
嘆きの島で再会できたあの時と同じ言葉を交わしながら、今度はヴィルの方からレイラの元へと歩いていく
ユウ『無事でなによりですよ、先輩』
ヴィル『ありがとう、ユウ。ねぇ、その腕に抱えてる小兎、あたしに預けてくれないかしら?』
横抱きにされユウの胸で泣き続けるレイラへ手を伸ばすと、"いいですよ"とそっとヴィルへ横抱きのまま手渡した