第93章 *愕然ワイルド(ルークの夢)*
ルーク『ロイヤルソードアカデミーに1票..裏切り者..レイラくんを傷つけて..ううっ!!
ぐうっ..そうだ、世界で..世界で一番美しいのは..あ、あああ!
うわあああああああああ!!!!』
それが最後のひと押しになる鍵だった。一度開いてしまえば、せき止めていたものが溢れ出すように、記憶は波となって一気に思い出を蘇らせる
流れ込む記憶に叫びがこだますると、夢の殻が音を立ててバラバラに砕け散った
そんなルークを祝福するかのような、突然観客席から大量の拍手と歓声が響き渡る。しかし、そこには誰ひとり座るものはいなかった
セベク『なんだこの歓声は!?観客もいないのに、一体どこから?』
ユウ『もしかして、これってVDCのときの歓声..?』
ルーク『ふ、ふふ..そうだ。"あの日"はこんな風に万雷の喝采がコロシアムに鳴り響いてた。どうして忘れていたんだろう。どうして忘れていられたんだろう。雪の降る庭で、語り合った日々..Miraを睨みつける、悔しげな君の横顔..真っ赤な林檎に仕込まれた毒を、飲み干すことができなかったあの日を!
なにより、あの日の行いが、大切な愛らしいあの子を深く傷つけてしまった。決して、決して忘れないとこの身に誓ったはずなのに。それを私は..私は..』
エペル『やった!ルークサンが目を醒ました!』
『(..よかった。でも..)』
ネージュ?『Rさん。悲しい顔をして、どうしたの?ね、もう泣かないで』
ヴィル?『ねぇ、一緒に歌いましょう。みんなで歌えば、きっともっと笑顔になれるはずだわ』
ネージュ?『さあ、君も舞台に上がって..えっ!?』
誘うように伸ばした手がピタッと止まる。ネージュとヴィルの皮をかぶった闇へ向けて、鋭く光る矢の先が、真っ直ぐに向けられていた
ヴィル?『!?あなた、なぜあたしたちに向けて矢をつがえているの!?正気!?あたしたちは世界的人気俳優、ヴィル・シェーンハイトとネージュ・リュバンシェよ!? 』
ルーク『ああ、夢と分かっていてもなお..君たちを傷つけようとしていることに涙が止まらないよ』
大事な二人へ武器を向けることの胸の痛みに顔を歪め、それでもその手は下ろさず頬を流れる涙もそのままに、ギリっと弦を引く手に力を入れた