第93章 *愕然ワイルド(ルークの夢)*
エペル『..イデアサンの意見も正しいと思う。でも、ルークサンがこんな夢を見てる理由はそれだけじゃないかもしれない』
セベク『どういう意味だ?』
エペル『現実のヴィルサンは、ネージュに対してかなり強いライバル心を持ってるんだ。VDCの頃は、絶対に世界一になるって..ネージュに勝つんだって、ずっとピリピリしてて、それで..
ヴィルサンは、世界一にかける想いが強すぎた。だから、VDC当日..』
エペル、ユウ、グリム、レイラの脳裏にあの日の記憶が蘇る。仄暗い闇を帯びた瞳で、ネージュを毒殺しようとし、それを止められオーバーブロットに陥った彼の恐ろしくも悲しくもある淀んだ姿。そして、激しい戦いの末にギリギリ救うことができた大切な記憶
『....』
あの時の彼の抉られるような悲痛な想いが胸にこみ上げ、レイラはユウの服をギュッと握り、肩口に顔を埋める
エペル『普段なら絶対にしない。今まで築いてきたヴィルサンの全部をぶっ壊すようなことをしちゃったんだ。結局、色々あってニュースで報道されるような大事件にはならなかった。でも..』
イデア『あー..そういやヴィル氏がオーバーブロットしたのは、VDC当日だったって調書に書いてあったっけ』
オルト『そうだね。もしヴィル・シェーンハイトさんがネージュ・リュバンシェさんをライバル視していなければ、彼はオーバーブロットしていなかったかもしれない』
エペル『...あの日のことは..ヴィルサンだけじゃなく、ルークサンにとってもすごく辛くて悲しい出来事だったんだと思う。誰よりもヴィルサンのことを信頼してたのは、ルークサンだったから..』
グリム『そういやあいつ、"ヴィルを信じたい"って、呪いがかかったジュースを飲み干そうとしてたんだゾ。オレ様、あん時はルークのやつがテンパりすぎて変なこと言い出したんだって思ってたけど..』
エペル『ルークサンは体を張ってでもヴィルサンを止めたかったんだろうし。もしかすると、それだけじゃなくて、2度と目覚めない呪いにかかってしまいたいくらいショックだったのかもしれない』
ユウ『じゃあ、あの人はVDCまでの日々のことを全部なくしたこの夢を望んだ、ってこと?』