第92章 *出発プレパレーション(エペルの夢)*
エペル『美しい、だぁ!?その顔で、そのくぢで..2度と"美しさ"っとかだるんでねぇぁ!
"目を閉じて、息を止めて..
深紅の果実(スリープ・キス)!"』
怒りに震えながら紡がれた詠唱は、瞬く間に二人をガラスの棺に閉じ込め、やがてその姿は元の闇へと戻り跡形もなく消えていった
エペル『はぁ、はぁ..2度と起きてくるんじゃねえ!そこで永遠に凍りついてろ、ほつけなし!』
イデア『エ、エペル氏ってあんなキャラだったんだ..VDCの時の印象と違いすぎ..』
オルト『え?そう?1年生の間だと、もう結構あのキャラで定着してるみたいだよ』
グリム『おう、エペル!オメー、やっと目が醒めたんだゾ?』
エペル『うん、やっと頭がはっきりして
..ぐへっ!!』
突然前から衝撃が走り、後ろへ倒れそうになるもなんとか踏みとどまる。腕で抱きとめた黒い小さな影が、その手を背中に回し強く抱きついてきた
エペル『あ、危ねぇな!後ろさぶっ倒れてあだま打っだらどうすんだ..って、レイラ、おめ..泣いてる?』
『ん..泣いて、ない..っ、エペル、戻ってくれて、良かった..会いたかったの』
胸に顔を埋めたその表情は分からない。しかしその声と体が小刻みに震え、すがりついてくる腕の強さが顔を見ずとも全部を物語っていた
そんな小さな兎をエペルは優しく包み込み、艷やかな黒髪をゆっくりと撫でる
エペル『うん、俺も会いたかった。心配かけて、ごめんな..』
いつもより低く甘い声が耳をかすめ、久しぶりに聞いたその声に涙を流しながら、レイラは暫く細くも力強い腕の中にいた
エペル『みんなにはかっこ悪いところを見せちゃったね』
シルバー『そんなことはない。闇に打ち勝てるのは、強い意志を持つものだけだ』
セベク『ふん。軟弱者かと思っていたが..悪くない戦いぶりだった。1年生なのに、ユニーク魔法をものにしているとは..』
エペル『えへへ、まだ成功率は7、8割ってところだけど、決まっていがった!』