第91章 *内密コール*
目の前が光に包まれ何も見えない中聞こえてきた、何かが割れる音と響く叫び声。そして腕に伝わる重さと感触が変わり、段々と光は収まっていく
もぞもぞと腕の中で動くものを見下ろすと、そこには真っ黒な体色に紫の腹、そしてまだ小さい翼とツノを生やした一匹のドラゴンがこちらを見上げていた
?『ギャァアアン!』
リリア『生まれ、た..?本当、に?』
?『ギャァァァーーッ!』
ブワッ..!!!
突然緑色の炎を口から吹き出し、リリアは思わず仰け反る。何かとすぐに炎を足元に走らせるマレノアそっくりな所業だった
リリア『うわっ..こいつ、生まれたてのくせに一丁前に火を吹きやがる!はは!見ろ、マレノアと同じ緑色の炎と目をしてる。って、お前以外に誰もいねぇか。マレウス..ああ、やっと会えた』
マレウス(幼体)『ギャォオウ!』
リリア『200年もかかっちまった..ふ、あはは..は..っ、う、うう..ゔぅ〜〜〜ッ..!
うわぁあああああ〜〜〜〜!!』
今まで抑えていたもの、そして200年かけてようやく孵せたことへの安堵、腕の中の小さな命への歓喜に、ボロボロと大粒の涙を零し泣き叫ぶ声が灰色の空に響く
リリアのこれまでの旅路をずっと見守っていたシルバーたちにもぐっと込み上げるものがあり、全員涙を滲ませていた
シルバー『..ずっと思っていた。なぜ親父殿の夢はこんなに辛いことばかりが起きるのだろう、と。でも..ようやく分かった。きっとこれが"親父殿が一番幸せだった瞬間"なんだ。戦って、傷ついて、失って..たくさんの悲しみの先にしか、この幸せは訪れない。マレウス様がお生まれになった、この瞬間は..!』
セベク『ううっ、ぐすっ..マレウス様のご誕生に、こんな経緯があったなんて。茨の谷の歴史書は何冊も読んだが、どれにも記されていなかった。おじい様は何故、この素晴らしいお話を僕にしてくださらなかったのだ..?』
『ぅ..ぅ、ぐすっ、ぅぅ..っ』
ユウ『よしよし..ずび..』