第91章 *内密コール*
?『ーー時間ないなら、尚更オレが言ったこと、忘れないで。オマエ、妖精なら何百年も生きるだろ?
大丈夫、王子はまだ生きる。オマエは長い時間で、オレの言ったこと分かればいい』
足音と共に青年の背中がどんどん遠ざかっていく。もうリリアは追いかけることはしなかった
偶然とはいえ頼みの綱になりそうだった青年のくれた答えは、納得のいくものではなかった。絶望に打ちひしがれるように再び膝をついた
リリア『っ、くそっ!!何なんだよあいつ。全然答えになってねぇよ!
..どうすればいい..どうすれば、あいつを孵してやれる?』
フワッ...
半ば諦めていたその時、地についた手から温かいものが溢れてきて周りへ伝っていく感覚がした
リリア『なんだ、この感覚は?魔力が勝手に指先から溢れていく..!』
手を見つめながら突然のことに驚きながらも、ゆっくりと立ち上がると、まるで吸い寄せられるように城へと近寄り、その外壁にそっと手のひらで触れる
脳裏に浮かんだ詠唱が静かに彼の口を動かした
リリア『"全ては過ぎ去る日のように。どこへ向かうも瞬きの間よ"
遠くの揺りかごまで(ファークライ・クレイドル)』
聞こえてきたのは子供の笑い声、大人たちの談笑、少しの仲違いの声、 様々な思い出がほんの一瞬だけ目の前に広がり、そしてすぐに元の廃城へと戻る
リリア『..今のは?この城の過去の風景..?俺の魔法、なのか?』
試しにもう一度試行すると、やはり一瞬目の前に城内での思い出が広がった
リリア『見える..少しだけだが、この場所に残された物の記憶が!はは、やった!この魔法があれば、今までよりずっと調査できることが多くなる。遠い過去の記憶..その中には、ドラゴンの卵を孵す糸口も、きっと..!絶対に見つけ出してみせるぞ、あいつを孵す方法を!』