第91章 *内密コール*
縋るような嘆きが吐き出される。脳裏に浮かぶ揺籃の塔で日に日に失われつつある幼い命に、焦燥から半ば自棄になりかけていた
そんなリリアの願いは思いもよらない形で叶えられることになる
?『ーーー綺麗な城。周りの景観も荘厳さを邪魔せずに、むしろ調和して一つの芸術品として完成してる。
..廃城なのが惜しい。持ち主や訪れる誰かがいる時に来たかった』
リリア『!?誰だ?』
足音も気配も全くなかったはずの空間に聞こえてきた声に顔をあげると、一人の美しい青年が廃城を見つめ感嘆の声をもらしていた
月明かりに淡く照らされたその短髪は、夜の黒にも負けないほど深く、熱を帯びたように揺れる瞳は、真っ赤な薔薇さえも恥じらうような鮮やかな紅玉を嵌め込んだ深紅の瞳
そして、頭から伸びた兎耳はリリアの声にピクッと反応すると、僅かに傾け顔ごとこちらへと振り向いた
グリム『ふなっ!レイラみてーな髪と目をしたやつがいるんだゾ!』
『!あれって..』
ユウ『レイラと同じ、黒兎?』
リリア『なんで、こんなとこに黒兎が..』
ふわりと吹いた風に髪を遊ばせ、憂いとも熱情ともいえるその横顔は、性別種族関係なく引き込み魅了するものだった
?『誰もいないと思ってたけど一人いた..妖精か。もしかしてオマエ、お城の関係者?』
リリア『..ちげぇよ』
?『そ。こんな廃れたところに来るの、オレみたいなやつか、道に迷った旅人のどちらか。ということは、オマエは道に迷ったのか?保護者はいる?』
リリア『迷ってねぇ。初めて使いに出たガキじゃあるまいし』
子供扱いするような言い方にイラッとしながら、少し距離を置きながら立ち上がる
それと同時に、自分の言葉に何かが引っかかり一度口を閉ざすと、自嘲的な笑みで足元へと視線を落とした
リリア『..いや、テメーの言う通り、俺は迷ってるのかもしれねぇな。もう、どうしたらいいか分かんなくなっちまった』