第91章 *内密コール*
景色が元の真っ暗闇へと戻る。シルバーは自分の父親がかつて世界を旅していた理由を知り、そっと視線を落とした
セベク『400年前..今よりも他種族に対して偏見が多かった時代だ。楽な旅ではなかったはず』
シルバー『一体親父殿は、どんな旅をしたんだろう?』
『ねぇ、あの光って..』
指差す先には小さな光が浮かび、それはシルバーを追いかけていたときに見た、過去の景色へと繋がる光だった
全員で互いの顔を見つめると、小さく頷きその光の方へと足を踏み入れた
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リリアの旅は気が遠くなるほど長く、心を病みそうになるほど、妖精への偏見と畏れに溢れていた
妖精だと分かった瞬間、まるで目の敵にするように町を追われ物を投げつけられ、逃げるように次の町へ
結局マレウスを孵すための手がかりも見つからず2年が経ち、一度リリアは茨の谷へと帰ってきた
黒鱗城・揺籃の塔
リリア『よう、マレウス。2年ぶりだな。お前がいつ星に還っちまうかとヒヤヒヤしてたが..粘ってるじゃねぇか。ん?』
話しかけるリリアに卵はなんの反応も示さない。ただほんのりと内側から僅かな光が瞬くだけだった
リリア『ずっと寝てるだけじゃ、退屈だろう。少し..土産話でもするか』
リリアはこの2年で訪れた国や街のこと、その土地の食べ物のことや街の祭りのことなどを話して聞かせた
まるで眠る前に聞かせるおとぎ話のように
リリア『次は南に足を延ばすつもりだ。今度は何か有益な情報が手に入ればいいが。
..じゃあな、マレウス。くたばるなよ』
去っていく背中に、卵はまた小さな光を放つ
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リリア『よう、調子はどうだマレウス?魔力を受け取る日と受け取らない日にばらつきがあるんだって?バウルに聞いたぜ。
何が気に入らねぇってんだ?一丁前に好き嫌いしてんじゃねぇ。お前の母親も好き嫌いが多くて、城の厨房係を困らせてばかりいた』
母であるマレノアに似たのだと思うと笑みが溢れ、似なくていいんだと言いながら立てた膝の上に顎を置いた