第12章 *終曲ハーツラビュル*
リドル『だってトレイが昔、レシピには載ってないけど美味しいタルトには絶対隠し味にはオイスターソースが入ってるって...』
『トレイさん...』
トレイ『ぶっ...あはは!まさかあの冗談を真に受けて本当に入れる奴がいたなんて...あはは!』
リドル『...あは、あはは、そうだね。馬鹿だな、ボク...あははっ!』
腹を抱えて笑うトレイに、怒るどころか一緒になって笑いだすリドルは年相応の少年の色を感じさせた
そんな二人につられて周りにも笑い声が伝染していく
『あはは...でも、トレイさん。その冗談はダメ』
トレイ『はははっ、悪い悪い。にしてもレイラは味覚が鋭いな』
『獣人、だからかな...』
そんなことを話していると、何もないのにタルトの入った皿がフワッと空中に浮かぶ、するとジワジワとその皿を浮かせた者の姿が現れていく
チェーニャ『ふんふふーん♪トレイのお菓子はいつ食べても絶品にゃあ~。モグモグ』
リドル『チェーニャ!何でここに!?』
チェーニャ『ん?"何でもない日"だからお祝いに来ただけさ。おめでとう、リドル』
リドル『"何でもない日"はハーツラビュル寮の伝統行事だ。キミには関係ないだろう?』
チェーニャ『それはそっちの人達も同じじゃにゃーの?』
ニマニマとした笑みでユウ達を見ていたチェーニャだったが、レイラの姿を見つけた瞬間に驚いた表情で固まった
『誰...知らない人』
すぐ隣のトレイにしがみつくと、トレイは頭を優しく撫でながらチェーニャを紹介してやった
トレイ『こいつはチェーニャ。俺とリドルとは幼馴染みなんだ』
『ネコさん...』
チェーニャ『こりゃあ...まさか黒ウサギの...』
リドル『彼女は確かに特殊な素質の黒ウサギだ。だけど文献のような危険はないよ』
チェーニャ『....あの時は遠目からだったから確信はなかったが。そうか...お前さんがあの黒ウサギ。すご~く可愛いにゃあ♪』
ズイッと顔を寄せ、爛々と好奇の眼差しで見つめるチェーニャにレイラは警戒心MAXでトレイの背に完全に隠れた
チェーニャ『ありゃ...警戒されちまったがね?』
リドル『いきなり初対面でそんなに近づけばそうだろうね』