第91章 *内密コール*
バウル『実は..本日あなたを呼び出したのは、その卵の孵化に関して重大な問題が生じたからなのです』
リリア『..問題?』
バウル『はい。最初の5年ほどは、卵はマレフィシア様から魔力供給を受け..緩やかではありますが、確実に成長していました。しかし..しばらくすると、魔力の供給を拒絶するようになったのです』
リリア『なんだと?』
バウル『医者たちが"塔に魔力を送るより、直接卵を抱いた方が魔力も愛情も受け取りやすいはず"と言うので、マレフィシア様は公務の合間を縫って塔へお越しになり、卵を抱いてくださるのですが..それすらも、あまり効果がありません』
リリア『拒絶..まさか、祖母といえど親ではないからか?ありえない。マレウスは目も開いてねぇどころか、まだ卵の中にいるんだぞ。自分に注がれてる魔力や愛情が誰のものかなんて、分かるはずがねぇだろ!』
バウル『..国中の医者を呼びつけて診せましたが、未だ原因は不明です。ただ、分かっていることは1つ。
このままでは、マレウス様も遠からず星に還ってしまうということです』
リリア『そんな..!』
バウル『卵が僅かしか魔力を受け取らないため、女王陛下は通常必要とされている何倍もの魔力を注いでおられる。マレフィシア様は既にご高齢であり、これ以上のご無理はお体に障ります。
茨の国..いや、茨の谷は未だ混乱の渦中にある。周辺諸国との緊張状態も続いています。女王陛下の肩にはこの国の命運がかかっており、卵につきっきりになることはできない』
リリア『...それで?』
バウル『ヴァンルージュ殿、どうか竜の懐刀と呼ばれたあなたのお力を貸していただきたい』
リリア『力を貸す?俺に何ができるってんだ。懐刀どころか、お役目も果たせなかった役たず..ただの"泥つきの蝙蝠"だぜ、俺は』
バウル『誰がなんと言おうが、女王陛下と私はあなたを信頼している。
..あなたには、外つ国に渡りドラゴンの卵を孵す方法を探してきていただきたい』
リリア『外つ国..って、茨の谷の妖精が人間の国に渡れる手形なんぞねぇだろう?』
リリア『ええ、ありません。
ーー表向きは』