第91章 *内密コール*
グリム『またこの真っ暗で寒いとこに来ちまったんだゾ〜』
セベク『ええい、情けない声を出すな!
リリア様を見つけだし、これが夢だと気づいていただければ、元いた場所に戻れるはずだ』
シルバー『ああ、そうだな..』
『シルバーさん?』
どこか物思いに耽るシルバーの横顔を覗き込むと、少しだけ柔らかさを戻した表情で優しく頭を撫でられた
シルバー『俺は..初めて知った。親父殿が右大将を退いたのには、あんな深刻な理由があったなんて』
セベク『..実は、リリア様に弟子入りした頃からずっと疑問に思っていた。退役した重鎮は、竜の都のそばに大きな屋敷を構えていることがほとんどだろう?なのに..お祖父様が国の英雄と尊敬し、若様が家族同然と慕うお方が..あんなに王都から離れた森の中に、隠れるように住んでおられる。それは一体何故なのだろうと』
シルバー『親父殿はいつも、"王都の空気は肌に合わない"と言っていた。それに、俺を王都に連れて行くこともしなかったし..
だから俺は、てっきり自然の中で穏やかに暮らすのが好きな人なんだろうとばかり..しかしマレウス様が幼少の砌から、お2人に交流はあったようだ。それに俺が物心ついてからも、何度か女王陛下やマレウス様のお召で登城していた』
セベク『リリア様が一線を退かれ、マレウス様がお生まれになるまでの200年に一体何が?』
グリム『考えたってわかんねぇことをグダグダ言っててもしょーがねぇ!とにかく、リリアを探すんだゾ。そんでこんなジメジメしたとことはさっさとオサラバだ!』
シルバー『ああ..待っていてください、親父殿!』
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深く暗い闇の中。飲み込まれたリリアを探して歩き続ける
道中現れた闇を払いながら進んでいると、遠くから誰かの話し声が聞こえ、全員でそちらの方へと向かっていった
黒一色だった景色にゆっくりと色がついていく。そこは闇に飛び込む前、先程まで自分たちがいた黒鱗城の見える竜の都だった
シルバー『ここは..竜の都?』
グリム『闇の中でシルバーを捜してた時と同じだ。オレ様たち、ゴーストみてーに体が透けてるんだゾ』