第90章 *難航トランスポート*
セベク『嵐が止んだ。暗雲が、消えていく..』
シルバー『夜明け、だ..』
リリア『あ、あああ..ああああ...!』
シルバー『ヴァンルージュ殿!?』
再び膝をついたリリアに駆け寄ると、その瞳は信じられないと言わんばかりに見開かれ、明けていく東の空の光さえ映さないほどに仄暗く揺れていた
バウル『まさか、そんな馬鹿な!!こんな、こんなことが..っ!』
セベク『バウル様、どうなさったのです!?』
『はぁ、はぁ..っ!!』
ユウ『レイラ!?大丈夫?どこか苦しいの!?』
突然自身を掻き抱くようにして座り込むその瞳は、リリア同様に光を失い、混乱と恐れに満ちていた
『はぁ..っ..め、さま..』
ユウ『え?』
『おひめ、さまが..』
『『マレノア様の魔力/お姫様が...
消滅、した/消えちゃった...』』
『『...っ!』』
告げられた残酷な事実に全員息を呑んだ。突然のことに言葉が出ずに立ち尽くす中、リリアは卵を片手にもう片方の手を地につけて大きく項垂れた
リリア『マレノア..マレノア..!!俺にもっと力があれば、無理やりにでもお前を黒鱗城に連れ帰ったのに..!なんで、どうして..!
レヴァーン、お前との約束も..俺は、俺は..!
くそおおぉおぉ〜〜〜!!!!! 』
体を引き裂かれるような痛みが駆け上がり、後悔と絶望と怨念が混じり合う悲痛な叫びが城の渓谷に響き渡る
『(おひめさま..死んじゃっ、た..どうして?ねぇ、どうしてこんな、酷いこと..
なんで?なんでリィさんもワニさんもお姫様も、妖精のみんなはこんなに苦しまなきゃいけないの?
リィさんはいっぱい頑張ってるのに、いっぱい..頑張ったのに..こんなことばっかり)』