第90章 *難航トランスポート*
セベク『お、収まったでしょうか?』
バウル『どうやらそのようだ..はっ!今来た道が、崩れた岩で塞がってしまった』
シルバー『次の崩落があるかもしれない。先を急ぎましょう』
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茨の国・黒鱗城
リリア『ついに..たどり着いたぞ..
黒鱗城に!』
目の前に広がる黒鱗城は、夜霧漂う薄暗い断崖絶壁の上にそびえ立ち荘厳でどこか孤高という雰囲気を放っていた
ユウ『ここが..』
『お城..』
近衛兵『ガルルル!ガァァッ!』
近衛兵『クケーッ!』
リリア『俺のことはいい!卵..この卵を、王城まで..!急いで"揺籃の塔"の準備を..マレフィシア様に伝えてくれ、早く!』
容態を心配して助けを呼ぼうとする近衛兵たちに卵を優先するよう命令すると、近衛兵たちは一目散に王城へと走って行った
それを見届けると突然体の力が抜け、リリアはその場で膝をついて座り込んでしまった
リリア『ぐっ..!』
『リィさん!』
バウル『右大将殿!誰か医者を呼べ、すぐに治療の準備を!』
リリア『医者なんぞいらねぇ。勅命は、果たした..俺はすぐに、翠が原に戻って..!』
バウル『何を馬鹿な!そんな体で戦場に戻るなど無謀が過ぎます!』
『そうだよ。今は休まないと..』
とうに限界が来ているはずの体を引きずって戻ろうとするリリアを抑えようとしたその時、重苦しい暗雲を裂くように、遠くの空から眩い光が射し込む
セベク『なんだ!?急に東の空が明るく..』
リリア『そんな..まさか、この光はっ!』
遥か彼方の野ばら城から、白銀と深緑の光がぶつかり合う。その轟音が鳴り止むと同時に、照らし出した光がゆっくりと雲を晴らし、黒鱗城に陽が差しこんでいく
それはまさにーーーー夜明けの光だった