第90章 *難航トランスポート*
『ぅぅ..寒い』
シルバー『魔の山の側で暮らしていたが、こうして登るのは初めてだ。凄まじい冷気で、手足が凍えて力が入らない。それに、あちこちから刃物のように尖った岩が突き出していて..まるで山が俺たちを拒んでいるかのようだ』
ユウ『寒すぎでしょ、ふざけんなよ。もう..』
魔の山から吹く魔力が冷気となりシルバーたちを襲う。震える体を抱きしめながら進んでいると、体の芯から凍りついていくような感覚がした
『ぁぅ..っくしゅん!』
リリア『寒いのか、シルバー?それにユウもレイラも』
寒がる三人に、しょうがねぇなと羽織っていたフード付きのマントを脱ぐとズイッと差し出した
リリア『3人..まあ、レイラは小せぇからいけるか。お前らでこれでも羽織ってろ』
シルバー『い、いえ平気です!ヴァンルージュ殿こそ、体を冷やしては傷に障ります』
リリア『傷が完治したわけじゃないが、この山に充満する魔力は妖精たちに力を与えてくれる。俺は寒くねぇから、気にするな。こんな所でお前らにぶっ倒れられると面倒だ』
シルバー『で..ではお言葉に甘えて..』
リリアのマントを広げ3人を包もうとするが、さすがに入りきらずレイラを挟んだ両隣のユウとシルバーは思いっきりはみ出していた
『私、いいよ?』
シルバー『いや、二人で羽織っているといい。お前に倒れられたら、その方が俺にとっては辛い』
『でも..』
セベク『なら、これでどうだ?』
『わわっ..』
突然腕を引かれ逞しい片腕に抱かれると、頭の上からパサッと大きなマントが体を包んだ
『セベク..』
セベク『こいつには僕のマントを貸してやる。だからお前たちは二人で、リリア様のマントに感謝をして羽織らせて貰え』
シルバー『セベク..悪い』
申し訳なさそうなシルバーにフンと鼻を鳴らすと、レイラの肩を抱く強さを少し強める
『ごめん』
セベク『べつに貴様のためではない。お前が動けなくなれば、リリア様やバウル様にご迷惑がかかる』
『..ごめん』
セベク『謝るな。いいから、もう少し僕の方に寄れ』
『ん』