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【ツイステ】黒兎は駆け巡る

第90章 *難航トランスポート*





よほど嬉しかったのか、ほぼ一息で身に纏う鎧を自慢気に披露する。しかし、恍惚とした笑みで語り終え、その感想を待っているが一向に一言も発せられない声に閉じていた目を開ける


セベク『..やけに静かだな。おい聞いているのか、グリム?..って、すごく遠くにいる!』


高らかに語っている間にグリムたちはさっさと歩き出し、既に遠くの方で小さな姿になっていた。共に連れ立つリリアたちも半分呆れた様子でセベクを見つめる


グリム『ちんたらしてると置いていくんだゾ、セベクー』


ユウ『話は歩きながら聞いてあげるから、さっさと来なよ』


セベク『こら、貴様ら!せっかくこの装備の素晴らしさを語っていたというのに..待て!





ちゃんと僕の話を聞け〜!』






情けない声を響かせながら早足で追いかける。すると、そんなセベクの元にトタトタと小さな姿が向かってくる


『セベク』


セベク『なぜ戻ってくる?そっちで待っていれば..』


『....髪』


目の前で止まると軽く背伸びをして手を伸ばす。細い指がフードが脱げて露わになった若草の髪に触れる


いつもは上がっているのに、続く戦闘ですっかり降りた前髪を指の背でなぞると、溜まった雫が指から手の甲へと伝い落ちる


『前髪、下ろしてる..いつもと違ってそっちもカッコいい』


セベク『なっ..///い、いきなり何を言うのだ!こんな時に..』


前髪に触れる指、そして向けられるふわりとした笑顔にドクンと鼓動が高鳴り、一気に熱が込み上げてくる


照れ隠しに即座に離れると、見られまいと赤い顔を背けてフードを深く被り直した


『ぁ..もうちょっと見てたかった』


セベク『いいから行くぞ!リリア様たちをお待たせしてしまっている!』


『待ってセベク。置いてかないで』


さっさと歩き出してしまうセベクを慌てて追いかけると、振り向いたセベクが無言で手を差し出す

 



セベク『..早く手を取れ』


『ありがと』


手を重ねると温かい手にしっかりと掴まれ、レイラの歩幅に合わせた小走りでリリアたちの方へと向かっていった

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