第90章 *難航トランスポート*
シルバー『!!あ、あの黒い茨とモヤは、マレウス様がオーバーブロッドした時と同じ..!』
『もしかして、お姫様..』
見覚えのある光景にゾッと背筋が凍りつく。そんなレイラたちの背後で、暴風雨と雷によって山を繋ぐ橋が悲鳴を上げ始める
リリア『まずい。魔の山への大橋が崩れるぞ!』
バウル『急ぎましょう!!』
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飛ばされそうなほど強い向かい風の中、大慌てで橋を渡り切ると、それを見計らったように橋がついに限界を迎えバキバキと音を立てて崩れ落ちていった
バウル『橋が崩落して奈落へ..危ないところでしたね』
リリア『ああ。だが、これでもう人間どもも追ってこれないだろう』
グリム『おーい。レイラ、シルバー、セベク!リリア、バウルー!』
『グリム!』
5人の姿を見つけ、大きく手を振って岩の隙間から飛び出してきたグリムを強く抱きしめると、腕の中で"ムギュ!"と潰れた声がした
セベク『グリム、ユウ!卵様はご無事か!?』
グリム『ぷはっ!お、おう。さっきの地震で岩が転げ落ちてきて危ねぇところだったけど、オレ様とユウが守ってやったんだゾ。感謝しろ!えっへん!』
自慢気に胸を張るグリムに遅れてこちらへと歩いてきたユウの腕には、ヒビ1つないマレウスの卵が抱えられていた
ユウ『卵ならここだよ。グリムが魔法で岩を弾いてくれたんだ。流れ弾が頭に当たって痛いけど』
セベク『ふん。貴様らにしてはなかなかの働きじゃないか。褒めてやろう!』
グリム『相変わらず偉そうなやつなんだゾ』
ジトっとした目で上からの物言いにため息をつくが、ようやく本当に全員が無事に揃ったこともあって、その口元は若干の笑みが乗っていた
グリム『ところでセベク、おめーなんか別れた時と服がちがくねえーか?』
ユウ『あぁ、確かにバウルさんみたいな鎧だし、前髪もなんか降りてるね』
セベク『ふっ..気づいたか、グリム!見ろ、この素晴らしい装備を!バウル様に認められ、特別に王宮近衛兵の装備を賜ったのだ!夜の森のような深い翠、そして肩には茨の国の紋!なんと素晴らしい意匠か..! 』