第90章 *難航トランスポート*
セベク『あなたもそこで休んでいてくだされば..!』
『そうだよ。リィさん、まだ治って..んむ』
止めようと近づいてきたレイラの頬を片手でむにゅっと掴むと、もう片方の手でワシャワシャと少し雑に髪を撫でた
リリア『馬鹿野郎。この大一番に大将が寝ていられるかよ。心配すんな。傷は塞がってきてる。魔の山の加護サマサマだ。
それと、どっかのお人好し様の甘ったるい匂いのおかげでな』
『!!』
驚いた様子のレイラの頭をポンと撫でると、銀の梟たちに向き直り挑発するように投げかける
リリア『さあ銀の梟ども..逃げ出すなら今のうちだぜ』
鉄の者『ふん、満身創痍のくせに強がりおって。たった5人で何ができる。必ずや貴様の髷とドラゴンの卵を持ち帰り、英雄となってみせよう!
貴様らの天下もここまでだ..怪物どもめ!!』
『ーーーっ!!!』
リリア『おいおい、そんな言い方していいのか?俺たち妖精を貶すようなことを言えば..
こわーい兎がお前らを本気で殺しにくるぞ』
『ーーっ!!ふ、ぅぅ..っ!!』
殺意の色を混ぜた魔力を膨らませ、今にも殺戮の獣と化しそうなレイラをちらりと横目に見やる
シルバー『!まずい..』
リリア『安心しろ。俺に任せとけ』
唸るように鉄の者たちを睨みつけるレイラの肩を抱き寄せ、小さな耳に唇を寄せて囁いた
リリア『怒りは捨てなくていい..だが殺すな。あいつらはお前がその手を汚してまで殺すほどの価値なんかねぇんだ。いいか、お前はあの掘削機を二度と使えない状態にすることだけ考えろ。
あとの人間どもは俺たちがやる。いいな?』
反論は許さないと言わんばかりの低音に、畏れにも似た寒気が這い上がる。怒りに染まった瞳が僅かにその獰猛さが治まると、静かに頷いてその視線を鉄の者たちから掘削機へと向けた
リリア『良い子だ』
内心ホッとしながら、リリアは体を離して魔石器を振りかざす
リリア『さあ..行くぞ!!』