第90章 *難航トランスポート*
ユウ『あ、そうだ。抱きまくら..にしちゃ怒られるけど、リラックスして寝るにはなにか抱きしめてたほうがいいって聞くから..はい、ツノ太郎持ってて』
『え、いい、のかな?』
なんの気なしにズイッと差し出された卵を恐る恐る抱きしめると、温もりは感じられないが固い殻の奥底で揺れる胎動のような振動に小さな命を感じ、腹に軽く押し付けるように抱え込む
『(ママやパパの愛と魔力..お姫様の代わりになんてならないけど)
良い子、良い子..ツノ太郎..』
どうか今の自分の様にならないで、という願いと愛を込めてほんの少しだけ魔力を注ぐ
『ちょっと寝るね』
ユウ『うん、おやすみ』
腕の中でドクンと一際大きく鼓動の高鳴る感触がした
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少しの休息を経て再び歩いていると、行く手の遠く先、立ちはだかるようにそびえ立つ黒く大きな山が顔を出した
棘が幾重も突き出し、まるで来る者を拒むような出で立ちが畏怖を感じさせると同時に、漂う魔力が体に染み込んでいくのを感じた
シルバー『あれが魔の山と呼ばれる霊峰だ。伝説によれば、かつてあの山には茨の魔女が居城を構えていたとか..あの険しい山の先に、この国の王都、竜の都と黒鱗城がある』
グリム『うげっ!じゃあオレ様たちあのとんがった山を登るってことか!?』
『痛そう』
シルバー『野営地で空を飛べる騎獣を借りられるかもしれないが..魔の山には常に暗雲が立ち込め、ドラゴンの許しを得ていない者には雷が落ちると言われている。それが外からの侵入者を退ける要塞の役割を果たしているというから..』
ユウ『空から行くのは難しいってことですか?』
シルバー『恐らく』
グリム『オレ様たちが運んでるのは、そのドラゴンの卵なんだゾ!?』
シルバー『全ては野営地に行ってみないことには、だな』