第90章 *難航トランスポート*
『みんなが、少しでも元気になりますように』
シルバー『ありがとう。だが、お前がそれでは休まらないだろ』
『少しでもみんなの役に立ちたいの(嫌われたく、ないから..)』
憂いを帯びた瞳で俯いた表情に、シルバーたちは先程リリアを助けた時のことを思い出した
シルバー『レイラ。お前はよくやってくれている。お世辞でも嘘でもない。本当に俺たちはお前に救われているし、とても力になっている。だから、』
『でも怖かったでしょ。私が..あの人たちを
殺したの』
雨で濡れた体が凍りつくような冷えた声色が背を撫でる。拒絶するように、しかし縋るような深紅の瞳がシルバーをまっすぐに見つめる
今にも壊れそうな弱々しい輝きに一瞬言葉が詰まる。それでも何か答えを返さねばと、ゆっくり手を伸ばして白い頬を撫でる。手袋越しでも分かる冷え切った感触に眉をひそめ、手のひらで温めるように包む
シルバー『繊細なお前がさっきのことを酷く恐れているのはよく分かる。だからといって俺も、ユウもグリムも、お前を否定することはしない。
その代わり、もう二度とお前にあんな選択は取らせない』
ユウ『夢とはいえああいうことしちゃったのはダメだけど、だからって誰もレイラのことを嫌わないし怖がったりしないよ』
『...ん』
優しくかけられる言葉にもその憂いの表情は変わることなく、寧ろどんどん沈んでいき、このままでは本当に壊れるのではないかと思えた
だからこそ、シルバーは反対側の頬にも手を添えてこれ以上沈まないようにゆっくり顔を上げさせた。そして額同士を軽くコツンとくっつけると、安心させるようにほほえみを浮かべる
シルバー『レイラ、お前が今思ってることを教えてほしい。何を考えて、何を抱えているかを聞かせてくれ』
『..嫌いに、ならない?』
シルバー『ああ、ならない』
グリム『ほんと、オメーは相変わらず細けぇことばっか悩んでんな。さっさと思ってること吐いちまうんだゾ』
ユウ『ゆっくりでいいよ』
『...ん』