第90章 *難航トランスポート*
シルバー『大丈夫。俺は山育ちで、重い荷物を背負って山登りするのは慣れてます。"生きてさえいれば、後でどうにかなる"..俺の師匠の教えです。
だから生きることを諦めちゃだめだ..絶対に!』
リリア『て、めぇ..この俺に、説教なんざ..』
背負われたことで体に力を入れなくても良くなり、それが段々とリリアの意識を奪い、重い瞼がゆっくりと落ちていった
グリム『リリアのやつ、気を失っちまったみてーだ』
シルバー『今まで立っていられたのが不思議なくらいだ。しばらく休んでいてもらおう。山を少し登った場所にある野営地に立ち寄るか、一直線に魔の山を目指すか..どちらにせよ、目指すは北だ。行こう、3人とも。親父殿とマレウス様を、黒鱗城へ届けるぞ!』
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シルバー『ここは..茨の国の王宮近衛兵の旗章がかかっているが、無人のようだ』
グリム『おっ、でも食料とか救急箱が置いてあるみてぇなんだゾ』
シルバー『この一帯を警備する近衛兵の立ち寄り所のような場所かもしれないな。少し休憩させてもらったら、すぐに出発しよう。のんびりしていると、セベクに追い越されてしまうかもしれない』
テントだけが残った無人の休息地で一同はしばしの休憩を取ることに決め、雨を凌げるテントの中に潜り込むと、ほっと一息を吐いた
ユウ『ふぅ..』
『ユウ、ずっと卵持ってた。大丈夫?』
ユウ『うん、とりあえずは大丈夫。心配してくれてありがとう。レイラだっていっぱい疲れたでしょ。しっかり休んでね』
『ん..』
シルバー『これで少しは親父殿も体を休められればいいが』
『シルバーさん』
シルバー『どうした?』
『あの..リィさん、私の隣に寝かせて』
シルバー『それは構わないが、何かするのか?』
突然の申し出に首を傾げながらも、リリアをレイラの横に寝かせ直すと、レイラはそっとリリアの頭を撫でその瞳の輝きを強める
すると、ふわりと甘く優しい匂いが全員を包むように漂い始める
ユウ『この匂い』
グリム『ふなぁ〜落ち着くんだゾ』
シルバー『これが、黒兎が放つという魅了の匂い..いい匂いだ』
優しく抱きしめられるような安心感と少し興奮を誘う匂いに安堵のため息が漏れる