第90章 *難航トランスポート*
ユウ『...』
崩れ落ちる体を抱きとめる。不安と恐怖に揺れる瞳が答えを求めて問いかける。ユウは少し考え、優しく笑みを浮かべると、額にキスを落として強く抱きしめた
ユウ『悪い子じゃないよ。でも良い子でも、なかったかな』
『...(ど、しよ..嫌われた。怖がられる。気持ち悪いって、化け物だって思われる..)』
はやる鼓動が全身に響き渡る。呼吸が乱れ血の気が引いていく感覚に目眩がしそうだった
それと同時に、自身の奥に潜む悪魔がそれを楽しそうに見つめていることに、揺らぐ意識の中で感じていた
シルバー『ヴァンルージュ殿!ご無事ですか!』
リリア『うぅ..お陰様で、なんとかな。首の皮1枚繋がったぜ』
シルバー『ここに来るまでに、何度も銀の梟と遭遇しました。あたりにまだ潜伏している可能性は高い。すぐに移動しましょう』
リリア『..シルバー、人間のてめぇに頼める義理じゃないが、聞いてくれ』
シルバー『え?』
リリア『俺は、そう永くない..手も足も、ろくに言うことを聞きやがらねぇ』
シルバー『は..な、何を..?』
リリア『頼む、この卵を..黒鱗城まで届けてくれ。
魔の山を正面に見て10時の方向に..この一帯を警備してる部隊の野営地がある。まず、そこを..目指すんだ』
シルバー『あなたを置いていけと言うんですか..?』
リリア『お前には聞こえてないだろうが、鉄の者足音が近づいてきてる。なあ、お前は聞こえてるだろ?』
ちらりと横目で見つめるが、当の本人はユウに支えられながらただ不安な瞳を揺らすだけだった
リリア『?どうした』
ユウ『実は..』
リリア『そうか、あれはお前の魔法だったのか。
…で?だからなんだってんだ?』