第90章 *難航トランスポート*
『ワニさんの声!きっと一人で戦ってる』
セベク『なにっ!お祖父様が!?』
その言葉に全員の足が速まり、次第に開けた場所に辿り着くと、レイラの言葉通りバウルが大勢の鉄の者たちを相手に武器を振るっていた
セベク『銀の梟に取り囲まれている!お助けしなければ。行くぞ!』
『『おう!/ああ!/ん!』』
鉄の者『ぐわぁ!?後ろから急に新手が!?』
鉄の者『に、人間!?それに、黒兎まで!?なぜ妖精の味方を..!?』
セベク『人間も妖精も関係ない!僕たちはただ"貴様ら"が気に入らん!だから戦うのだ!!』
『妖精さんたちの場所に勝手に入ってきてひどいとして..なのに妖精さんを悪者にするのがやなの』
グリム『そーだそーだ!気に入らねーやつは誰が相手でもぶっ飛ばす!それがナイトレイブンカレッジ流なんだゾ!』
突然現れた加勢に形勢逆転された鉄の者たちは、体勢を立て直すために慌ててその場から撤退していった
シルバー『仲間を呼ばれると厄介だな..だが、深追いは命取り。そして今は、バウル殿の手当てが先決だ』
シルバーの判断に頷くと、片膝をつきながら荒く息を吐くバウルの元へと駆けていく
セベク『バウル様!遅くなりました!』
バウル『お、お前たち..うっ!』
立ち上がろうとして体に走った痛みに再び膝をつく。全身ボロボロで、所々傷や出血が見える余りにも酷い状態に、すぐさま魔法薬をと思ったその時
ピーーーーッ!!!
『笛..あの人たちがまた来る。ワニさん連れて早く行こ』
セベク『ああ、急いで移動しよう。バウル様、どうぞ僕の肩に!』
そう言って伸ばされた手はバウルによってグッと押し返される。地に手を付きゆっくりと立ち上がるが、その足はおぼつかず今にも倒れそうなほどだった
バウル『私はここに残る。敵の相手をせねばならぬからな。お前たちは、右大将殿を追ってくれ』
シルバー『そんな..あなたを置いては行けません!』
バウル『くどい!私は貴様らの助けなどいらないと言っているのだ!ゴホゴホッ!』
強い口調で拒否するが、怪我の影響で咳き込むバウルの姿に、一同は頷けずに互いに困惑した表情で見つめ合う