第88章 *緊急リターニング*
リリア『ううっ、くそったれ!おい、バウル!この卵を預かってくれ。俺は上へ戻る!..うぐっ!』
立ち上がろうと踏ん張った足から力が抜ける。怪我の痛みが更に増して体を蝕み思うように動かなくなっていた
バウル『右大将殿、傷が!』
リリア『はぁ、はぁ..頼む、行かせてくれ。ここで行かなきゃ、俺は今まで何のために..』
バウル『くっ.....!!』
傷に耐えながらも必死にマレノアの元へと向かおうとするリリアの姿に、痛いほど気持ちがわかるもギッと奥歯を噛みしめ立ち上がろうとする肩を押し戻す
バウル『...その傷では、戻ったとて敵に一太刀も浴びせられますまい。姫様の言う通り、足手まといになるだけです。そして我ら王宮近衛隊にとって、ドラコニアご一族の勅命は絶対。戻れば姫様の裁きの雷槌が貴殿の身を貫くでしょう』
リリア『なら、今すぐ近衛隊なんか辞めてやる!こっちは雷なんか落とされ慣れてんだ』
バウル『冷静になられよ!あなたが抱いている卵は、茨の国の未来を背負う王だ!』
リリア『!!』
バウル『我らはお世継ぎをお守りし、黒鱗城へ辿り着かねばなりません!マレノア姫様を信じましょう。必ずや夜明けの騎士を打ち倒し、お戻りになるはずです。
姫様は、我らが束になっても敵わぬほど強い。そう豪語されたのは、右大将殿ではありませんか!』
『(ワニさん..)』
バウル『お世継ぎは、炎を吹くどころか一人で歩くことすらできない。このお方が今頼れるのは..右大将殿、あなただけなのです。
..どうか、堪えてください!』