第88章 *緊急リターニング*
『っ、お姫様っ!待って..や!行かないで!一緒に、一緒にいて!』
マレノア『..マレウスが孵ったら、お前が遊び相手になれ。黒兎ならそれくらい容易いだろう?
それと、わたくしが戻ったら覚悟をしておけよ。お前の首に枷をつけて一生飼ってやる』
『おひめ、さま...っ..!』
名残惜しそうに首をスルリと撫で、ツタの力を魔力を上げて強めると、今にも泣き出しそうな2人を見つめて小さく笑った
その笑みは先程までの妖精王として、魔女として畏怖を感じさせるものではなく、1人の母、愛する者を見送る慈悲に溢れたものだった
マレノア『マレウス..わたくしの愛しい子。頼んだぞ、リリア。
ーー夜の祝福あれ』
最期の別れの言葉を残し、その恐ろしくも愛に溢れた魔女は光の粒となって戦場へと向かっていった
リリア『やめろ..だめだ、行くな!!
マレノアーーーー!!!!』
悲痛な叫びをあげ必死に手を伸ばすが、それは何も掴むこともできず虚空をきり、目の前を覆う茨のツタに絡め取られ流されていった
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野ばら城・地下水路
ツタに押し流されるまま暫くすると、辺り一面真っ暗闇な空間にたどり着いた
シルバー『う..ここは?』
ユウ『真っ暗で何も見えない..っ、レイラ!どこにいるの!?』
『...ここ。シルバーさんといる』
シルバー『流されながら何とか手を取ることができた』
自分を守るように抱きしめる腕の強さ、温もりと匂いに少しホッとしながらも、脳裏には戦地へ消えていったマレノアと、それを引き留めようと叫ぶリリアの姿がこびりつく
『(リィさん..お姫様..)』
ユウ『良かった....それにしてもここどこだろう?水の流れる音だけしか聞こえないけど』
バウル『人間はまだ目が慣れないか。どうやら、野ばら城の地下水路に押し流されたらしい』