第88章 *緊急リターニング*
マレノア『くどいぞ。私は奴らに負けはしない。どれだけ数を集めようが、ことごとく焼き払ってくれよう。
だが..万が一私が戻らずとも、その子がいる』
そう言ってリリアの腕で大事に抱えられた、我が子が眠る卵へと熱の灯る瞳を向ける
リリア『お前がいなくちゃ、この卵は孵らない!』
マレノア『その時は、お前が孵せ』
リリア『無茶を言うな!ドラゴンは親の魔力と愛情でしか..真実の愛でしか孵せないんだぞ。俺には親の愛情なんぞわからん。誰かを愛したことだって..そんな俺にこの卵を孵せるわけがねぇだろ!』
眉をひそめながら一瞬、マレノアの側でオロオロとこちらを見つめるレイラへと視線を送る
"誰かを愛したことがない"
その言葉に偽りはない。だが本当にないわけではない。相反する想いを寄せる相手"二人"に胸が握りつぶされそうになる
そんなリリアにマレノアは"何を言っているんだ"と言わんばかりに先程よりも穏やかな笑みで返す
マレノア『私を愛しているだろう?幼い頃に私に求婚したのは偽りか?』
『ぇ..』
ユウ『んぐっ..!(あっぶな..何か飲んでたら完全に吹いてた。てか求婚って..)』
リリア『はぁ!?求婚って..200年以上前のガキの頃の話だろうが!なんで今そんな話を..』
昔の話を暴露され若干頬を赤らめながら、マレノアとレイラを交互に見つめる
『(リィさんはお姫様が、好き。求婚って..えっと、大好きな人とずっと一緒にいたいって言うこと..だよ、ね?なんでだろ..良いことのはずなのに、胸の奥がギューって苦しい)』
痛みを伴う靄のかかった感情に瞳が揺れ視界が歪む。咄嗟に見られまいと俯くが、マレノアだけはそれを見逃さなかった
マレノア『(まあ、今のお前はどこぞの小兎に絆されているがな..)お前はレヴァーンのことも愛していた。左大将であった我が夫と、右大将であるお前が共に過ごした時間は、夫婦よりも長い。愛する私たちの血を引く子を、お前が愛さぬわけがない。そうだろう、リリア?』